日本の養殖業は、イワシ、サバ、アジといった安価な多獲性魚類を餌料とし、主にマダイ、ブリを生産する産業として発展して来ました。しかし現在ではイワシ、サバ、アジも乱獲による海洋資源の減少の影響により魚価が上昇傾向になりつつあります。世界の人口は2050年には98億人まで増加することが予想されています。世界の人々の安定した食料資源確保のため、養殖業の果たす役割は変化を求められています。
関連するSDGs
環境負荷低減飼料
養殖場において従来の生餌の給餌では、漁場環境悪化に繋がり、魚病の蔓延、赤潮の発生を引き起こし、生産性低下の原因となります。環境負荷低減飼料の使用は、漁場の富栄養化を防ぎ、持続可能な養殖業を進める上で有効な手段の一つです。日清丸紅飼料では持続可能な養殖業の実現のために環境負荷低減飼料の開発及び推奨を進めていきます。魚粉の使用を減らした低魚粉飼料への切り替え及び飼料組成の見直し、最適な原料の組み合わせにより、海洋資源である魚粉・魚油に依存しない飼料の開発、普及に向けた取り組みを進めています。
新技術開発のための研究施設の整備
現在の水産研究所は愛知県・渥美半島の先端、伊良湖に近い三河湾に面した場所に位置しており、これまでに培ってきた高い技術と豊富なノウハウを基に養殖業界の持続的発展に寄与してきました。2024年春からは水産研究所を愛知県から鹿児島県へ移転、水産技術研究所と名称も改め、海面・陸上養殖施設も新しく整備して、より優れた飼料の必要な研究・開発が行える新しい施設を導入いたします。日本における養殖対象魚であるブリやマダイ、クロマグロなどの種苗生産から成魚仕上・出荷に至る全ての期間において利用可能な配合飼料の開発だけにとどまらず、国内外で養殖される新魚種に対しても配合飼料化に向けた飼育試験を繰り返し行い、未来の新しい飼料の研究開発を行っています。
鹿児島県南さつま市 新水産技術研究所
配合飼料化の推進
冷凍餌料やモイストペレット給餌が主体であるクロマグロ、カンパチ養殖において、各成長段階に応じた配合飼料、また人工種苗生産用の高性能な配合飼料の製品ラインナップを取り揃えています。水産資源への影響が大きい生餌・冷凍餌料に頼らない配合飼料化の推進に取り組んでいます。
魚粉使用比率削減の取り組み
養殖魚を管理するには飼料が欠かせません。しかし、養魚用の飼料には大量の魚粉が使用されており、魚粉の原料となる海洋資源の減少が深刻となっています。魚粉と同等レベルの栄養価が期待される動物性原料(チキン・フェザーミール等)を利用した従来型飼料の改良や次世代タンパク原料(藻類・昆虫ミール他)などの革新的な原料を最大限・効果的に、利用することで魚粉の使用量比率の削減を行い、実際に給餌して成長や健康に影響が及ばないことをチェックします。さらなる技術革新により将来的に有効な新規原料の開発にも期待が寄せられています。