高繁殖性母豚導入の際のチェックポイント
ここ最近、高繁殖性母豚が話題になっており、
すでに導入された養豚場の方もいらっしゃるかと思いますが、
今回は高繁殖性母豚の導入の際にチェックしておきたいポイントを考えてみたいと思います。
最新の高繁殖性母豚については、
産子数の増加による出荷頭数の増加が最も大きな特徴ですが、
劇的な産子数の増加に伴って、以下の様々な変化に注意を払う必要があります。
①体型の変化
遺伝改良で産子数を増やすためには、たくさんの受精卵を着床させるため、
より長い子宮を持つ母豚を選抜する必要があります。これはすなわち、
豚の胴体の長さに比例し、一般的に産子数の多い母豚ほど、胴体は長くなります。
またそのような母豚は産次を重ねる度に、長さが増して行きます。
従来、種豚舎のストールの長さは1800㎜が標準でしたが、
このような高繁殖性母豚を飼育する場合には、2,000~2,100㎜の長さのストールが理想的です。
これに伴いストールの幅も従来の600㎜程度から拡幅できればさらに好ましいと考えられます。
いずれにしても、母豚の体型の管理は高い繁殖成績を
引き出すために非常に重要なポイントとなります。
ボディコンディションスコアやP2点での背脂肪厚による精密な管理が求められます。
②乳房の数
従来6対以上あれば問題ないとされていた乳房も、現在では7から8対あって、
そのすべてが泌乳可能な母豚が増加しています。
産子数の増加速度といい、乳房数の増加速度といい、
最近の母豚の遺伝改良のスピードは、ブロイラーにも追いつきつつあるようです。
これらの乳房は、初産時から哺乳豚に吸われないと、
後々乳房炎を起こしたり泌乳能力が低下したりします。
従来は、初産豚には負担がかかるので
10頭以上は哺乳させるなと言われた事もあったようですが、
高繁殖性母豚の場合には、乳房数と同数の哺乳豚を初産からつけてやるべきです。
③適正な母豚数は?
このように、目に見えて産子数が増加する母豚を導入した場合には、
従来のままの母豚数を維持した場合、離乳から肥育豚の在庫が増加し、
飼育密度の増加による発育スピードの低下や、
呼吸器病の発生による事故率の増加の危険性があります。
子豚の収容スペースを増やせない場合には、
稼動母豚数をむしろ減らす事も検討する必要があります。
④最適な飼料の検討
高繁殖性母豚は、1腹毎の離乳体重が増える分、
要求する栄養量も当然ながら増加します。
従来の母豚用飼料を使って、給与量で調整しようとしても限界がありますので、
できるだけ高繁殖性母豚に適した栄養設計の飼料を使用したいものです。
それぞれの種豚メーカーが提示している栄養推奨量を満たす飼料を
選択して使用する事をお勧めします。
また、ミネラルやビタミンなどの微量成分についても、
推奨量を満たすためにプレミックス等の使用が必要になるかもしれません。
また、高繁殖性母豚から生まれたたくさんの哺乳豚を、
できるだけ多く離乳させるためには、里子などの哺乳中の飼育管理と同時に、
哺乳豚の成長をサポートする代用乳や人工乳などの効果的な使用も重要です。
さらに離乳前後の飲水量は、離乳体重や離乳後の増体に非常に大きく影響しますので、
当社の新製品である「ぶたプリン」などの活用もぜひご検討ください。
このように、高繁殖性母豚の導入に伴い、
施設、飼料、飼養管理なども含めて、農場全体を見直す必要があります。
すでに導入されている養豚場の皆様においては、
振り返ってこれらのポイントを再チェックされて見てはいかがでしょうか。
最新の母豚の高い能力をできるだけ発揮させるきっかけになれば幸いです。
文責 総合研究所 検査グループ 申ジエ