技術情報Technical Info

哺乳子牛のスターターについて


反芻動物の大きな特徴として胃が4つあり、他の動物が栄養源にできない繊維成分や
非たんぱく態の窒素を第一胃内の微生物の力を借り、消化することができます。
しかし出生直後から成牛と同様の消化を行えるわけではありません。

出生時の子牛は4つの胃を備えていますが、
第四胃の重量が胃全体の半分程度を占め、
反芻胃である第一胃、二胃は40%未満であり、
反芻動物としての消化機能は未発達の状態です。

代用乳などの液状飼料は、胃の開口部から、
第四胃に通じる第二胃溝が反射する
(溝状だった第二胃溝が筒状に変化する)ことにより、
第三胃を経由し、第四胃に流入します。
代用乳の消化は第四胃を含む下部消化管が主体で行われています。
このため、反芻動物としての消化が未発達なこの時期は、
単胃動物(豚など)に似た消化代謝機能を持っています。

反芻動物として未発達な子牛が反芻動物としての消化を発達させていく過程では、
固形飼料(スターター)の摂取が重要なものとなっています。
固形飼料では、液状飼料とは異なり、第二胃溝反射は起こらず、
第一胃内に入ります。第一胃内は生後直後から、微生物が生息するようになっており
第一胃に入った固形飼料は微生物により分解されます。

子牛の第一胃は液状飼料のみで育てた場合、
その容積や、絨毛が発達しないことが知られています。
第一胃は固形飼料(スターター)を摂取するにつれて発達します。
特にスターター中の炭水化物が代謝されてできた
揮発性脂肪酸(酪酸、酢酸、プロピオン酸)の化学的刺激により
絨毛の発達が促進されることが知られています。
このため、第一胃の発達にはスターターの摂取が重要となっています。

日清丸紅飼料(株)総合研究所では、子牛の時期のルーメン発達を重視し
代用乳の給与時期からスターターを食い込めるよう、消化管内での滞留時間の調整、
下痢をしにくい成分バランスの代用乳の検討をおこなっています。
またスターターについては、原料の調整を行い発酵が穏やかで
第一胃への負荷の小さなスターターの検討を行っております。

2015年度には、代用乳とスターターの調和を考慮した、新哺育体系として、
サックルフォルティ(代用乳)とハッピーハーモニー(スターター)を発売しております。
ハッピーハーモニーについては既存のスターターに比べ、
発酵の早い原料を低減し、下部消化管で消化される原料を検討することで、
ルーメンへの負荷を低減し、哺育期から食い込みやすいスターターとなっております。

「サックルフォルティ」、「ハッピーハモニー」にご興味のあるお客様は、
お近くの当社 大動物部までお問い合わせください。


文責 総合研究所 開発グループ 高梨暁

一覧へ