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鶏の産卵生理について


今回は鶏の産卵生理について解説したいと思います。
はじめに、鶏の産卵には光が重要な役割を果たしています。
光は鶏の脳下垂体前葉を刺激し、性腺刺激ホルモン
(卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン)

の分泌を促進することで、卵巣が発達します。
卵胞刺激ホルモンは卵胞の成長を促し、黄体形成ホルモンは排卵を誘起します。
また、多くの鳥類は春から夏にかけて繁殖の季節を迎えます。

一方、鶏は季節に関係なく一年中卵を産む周年繁殖動物ですが、
それでも日長時間が短くなると産卵しなくなります。
そこで、鶏舎では点灯時間を一定にし、
一年を通して同じように卵を産むように誘導しています。
光線管理は、性成熟のコントロール、産卵率の低下防止に重要な技術です。

鶏の卵巣と卵管.pngのサムネイル画像

次に、卵の形成過程についてです。
卵巣での卵胞の発育、卵胞の開裂による排卵、
卵管内での卵の形成、放卵という一連の現象で成り立っています。

卵巣は、ブドウの房のような構造で大きさの異なる多数の卵胞が存在し、
7~12日間かけて肝臓で生産された卵黄物質が血流を通して卵胞に蓄積されます。

排卵により卵胞から排出された卵黄は卵管の漏斗部に取り込まれ、
卵管内を、膨大部⇒峡部⇒子宮部(卵殻腺部)⇒膣部へと、
24~27時間かけて移動する間に卵が形成されます。

まず、漏斗部を15~25分かけて通過しますが、
精子が存在する場合は漏斗部で受精が起きます。

次に、膨大部で3~3.5時間かけて卵黄の周囲に卵白を構成する大部分が付着し、
峡部で1~1.5時間かけて内卵殻膜、外卵殻膜の2層の卵殻膜が形成されます。
そして、子宮部で卵白への水分の付加、卵白中の無機イオンの調整が行われ、
卵白が完成します。また、子宮部ではカルシウムが沈着して卵殻が形成されます。

子宮部での滞留時間は18~22時間で、子宮部での滞留時間に比例して、
卵殻は厚くなります。また、卵殻には気孔があり、外界とのガス交換が行われます。
卵殻の最外層はクチクラという膜で覆われ、外部からの微生物の侵入や、
水分の損失を防ぐとともにガス交換の調節を行うのに役立ちます。

次に、膣部では粘液が分泌され、放卵を容易にします。
膣部での滞留時間は1~3分で最も短いです。

最後に、総排泄口から体外に卵が放出され、この現象を放卵といいます。

以上のような過程を経て、鶏はほぼ毎日規則的に放卵しています。
放卵の間隔は24時間よりも少し長く、放卵の時刻は毎日少しずつ後ろにずれていきます。

午後に産むようになると1~2日間休産し、再び早朝より産み続けます。
連続した放卵の個数のことをクラッチといい、クラッチが長く、
クラッチ間の休産日数が短い鶏ほどたくさんの卵を産んでいることになります。

(文責 総合研究所 開発グループ 井上敬雄)

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