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データを活用した成績・収益改善手法または事例


最近、養豚農場を巡回しますと若い従業員の方を多くみかけます。そのような農場では成績改善への意識や知識の習得に対する意欲の高さがうかがえます。一方でベテラン社員さんの職人的技術は健在ではありますが、その技術の伝達がスムーズにいかないケースも見られます。そのため我々としても成績改善のためには数字のとれる項目を数値化し、分析を行い、具体的に数値で説明できるようなお手伝いを日々行っております。今回はそのような事例をいくつか紹介します。

① 淘汰母豚の分析
ある農場では分娩率の改善に苦労しており、その要因についてデータを調査しました。特に初産豚の分娩率が悪い傾向があり、年間の淘汰母豚のデータ集計してみると無発情(発情微弱を含む)が原因により淘汰されている母豚が非常に多くいることがわかりました(下グラフ左)。その中でも育成候補豚の比率が非常に高いことがわかりました(下グラフ右)。農場の方はなんとなくわかっていましたが、これ程多いとは思っておらずすぐに対策として①育成用飼料の使用、②過肥の抑制、③育成豚舎での発情確認を徹底し、徐々にではありますが分娩率が改善してきており、育成候補豚の早期の淘汰数が減ることで経営にもメリットがでてきています。
淘汰母豚の原因.jpg無発情での淘汰母豚の産歴.jpg

② 受胎率の分析
外部の人間が農場を巡回する中でもっとも見えにくい項目の一つとしては受胎率が挙げられます。そのような農場の場合には受胎確認結果と発情再帰日数や産歴、止め雄、P2点やAIの回数などのデータを照らし合して、今後の受胎率の改善に取り組んでいます。具体的な方法としては下記のように交配月あるいは分娩予定月ごとにExcelに母豚データを並べていきます(下の表が集計例)。

集計例.png

母豚データを並べた後にExcel関数を使って集計します。(COUNTIFSなど *Excalシート上で関数の挿入を選び、統計の項目の中で選択します。詳細な説明はExcelヘルプに記載しているため省略します。)

下の表が実際の集計後の分析結果を示しております。示した表は受胎確認した母豚を発情再帰日数別に集計しています。結果として、本来は受胎しやすい4、5日目に発情再帰する母豚と初産豚の受胎率が悪い傾向がわかりました。離乳後4、5日に発情再帰する母豚に対する対策として1回目のAIのタイミングを通常より12時間遅らせることにしました。その後の受胎率は90%以上をキープするようになり受胎率の改善がみられました。

分析例

発情再帰日数分析.png

次の例は受胎した母豚を離乳後P2別に集計した結果になります。この表では特に離乳後P2点が10㎜未満の豚での受胎率低下が見られたため、離乳後の給与量の増量(フラッシング)やその後の妊娠期の給与プログラムの変更により、母豚の体型が改善され、受胎率の改善につながっております。

P2分析.png

上記のような集計方法は既存の養豚管理ソフトに組み込まれていたり、またExcelデータで管理の農場でも簡単に表を作成することができます。グラフや表にすることでより視覚的に修正点がわかりやすくなり、その後の経過もわかりやすくなるメリットがあります。このようなデータを見るために弊社も養豚管理ソフトウェアとして「MNFIS」を販売しておりますので、今回の内容やソフトにご興味のある方は弊社社員までご連絡をお願いします。

技術サポート部 河本 敏夫

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