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子牛の呼吸器感染症にご用心!


子牛の生産性を低下させる要因の一つに牛呼吸器病症候群(BRDC:Bovine Respiratory Disease Complex)があります。Cravens (2004) によると、BRDCは輸送や環境変化等に伴う牛への各種ストレス感作→ウィルス感染(IBR、RS、PI3、BVD)→マンヘミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)の細菌感染→パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、ヒストフィリス・ソムニ(Histophilus somni)などの細菌感染により、結果として複雑な混合感染による呼吸器疾病が成立すると報告しています。また、マイコプラズマ類も増悪因子として考えられています。

秋口は日中と朝晩の気温差が大きく、家畜にとって体温調整が難しいため、特に体温調整機能や免疫機能が安定していない子牛で呼吸器感染症が発生しやすいと考えられます。子牛の呼吸器感染症への対策の一つにワクチン接種が挙げられます。本稿では、秋口からの呼吸器感染症の対策に向けたワクチンの活用法について紹介したいと思います。

ご存知の通り、ワクチンは呼吸器感染症の原因となるウィルスや細菌が感染する前に、これらに対する免疫力(抗体)を高める目的で接種します。生後まもなくの子牛は、自ら抗体を作ることは出来ません。

このため、子牛の抵抗力は母牛の初乳に含まれる抗体(移行抗体)に依存しています。一般的に、移行抗体は生後3ヶ月齢頃に消失すると考えられています。しかしながら、母牛の状態や生後すぐに子牛が摂取する初乳の量や質によって移行抗体の量に個体差があり、その消失時期は子牛ごとに大きく異なります。特に、子牛を群で管理される農場では、同じ群の中に免疫状態(持っている抗体の量; 抗体価)が様々な子牛が同居しているため、群としての移行抗体の消失時期を見極めて、適切なワクチン接種時期を検討していく必要があります。

以下は、ある生産農場(交雑種雄子牛)において、ワクチン接種時期を検討する前と後で測定したRSウィルスに対する抗体価の推移を示したグラフです。この農場では生後120日齢から180日齢にかけて抗体価が低下しており、この時期に呼吸器感染症が蔓延していました【図1】。そこで、呼吸器感染症が発生する30日前にワクチンの追加接種をお願いしたところ、生後150日齢での抗体価が十分量まで増加しました【図2】。生産現場からは、「呼吸器感染症の発症数や治療回数が減少し、治療費も削減できた」という嬉しいご報告も頂きました。

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【図1】ワクチン接種時期とRSウィルス抗体価の推移(変更前)  

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【図2】ワクチン接種時期とRSウィルス抗体価の推移(変更後)

このように、ワクチン接種は呼吸器感染症が発生する時期や抗体が消失する時期を見極めて適切な時期に実施することにより、子牛の疾病予防に大きく寄与するものです。ぜひ一度、ご自身で管理されている農場でも子牛の抗体量の推移をご確認頂き、費用対効果を見ながら最適なワクチンの接種時期について、検討されてみてはいかがでしょうか?

技術サポート部 増田 洋史

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