養豚生産管理ソフトでわかること
当社では、畜産生産状況をコンピューターで管理するMNFISというソフトウエアを販売し、お客様にご活用いただいています。MNFISには、牛、豚、鶏用にそれぞれ別のソフトウエアが用意されていますが、特に豚版では、日々の生産成績の管理の目的での使用以外に、毎年約100農場が参加して、農場間比較(いわゆるベンチマーキング)を行っています。2008年からスタートしたこの取り組みは、今年で9年目になりますが、それぞれのお客様の生産成績が、相対的にどういった位置づけになっているのかを判断できるツールとしてご好評を頂いております。9年目のベンチマーキングは、これからユーザーの皆様のデータ収集をさせていただく予定ですのでよろしくお願いいたします。
さてこのMNFISベンチマーキングは、約100農場がご参加いただいている訳ですが、同時に行っている生産にまつわるアンケートの結果も合わせて解析することで、各農場の生産指標ごとの順位を計算するだけでなく、生産におけるトレンドを様々な角度から検証することができます。
今回はその一例として、交配の方法とその方法毎の生産成績の比較を行ってみました。
<自然交配(NS)と人工授精(AI)の普及度は?>
2015年 当社MNFISベンチマーキングのアンケートによると、自然交配(NS)のみと答えた農場は全体の11%に対し、人工授精のみ(AI)が45%、NS/AI併用が44%で、合わせて89%の農場がすでにAIを取り入れていることが分かります。
<NSとAIで生産成績はどう変わるか?>
それでは、交配方法による成績の差はどうだったでしょうか。2015年当社MNFISベンチマーキングのデータベースより、白色系の母豚を飼養する農場のみのデータを抜粋してまとめた実績は下表の通りでした。
このうち、総産子数/腹(表中の産子/腹)、種付け分娩率(表中の分娩率)、分娩回転、年間一母豚あたりの離乳子豚数(表中の離乳子/年腹)の4項目について、3群の比較をしてみました。
①総産子数/腹
NSのみで12.79頭/腹、AIのみで12.71頭/腹、NS/AI併用での12.64頭/腹の順でした。
②分娩率
NSのみで85.7%、NS/AI併用で84.0%、AIのみで83.7%の順でした。
③分娩回転
AIのみで2.29、NS/AI併用で2.24、NSのみで2.17の順でした。
④年間一母豚あたりの離乳子豚数
NSのみで22.73頭/年/腹、AIのみで22.57頭/年/腹、NS/AI併用で22.32頭/年/腹の順でした。
これら4項目の指標を見ると、3群それぞれに成績の差がありそうにも見えますが、その傾向が一定でない事や、数値の差が大きくない事を考慮すると、現状ではAIを取り入れた場合の生産成績はNSとほぼ同等のレベルに達していると考えられるのではないでしょうか。かつてAIを取り入れるにあたっては、インキュベーターなどの設備投資と一定期間をかけての技術の習得が必要で、それなりの覚悟を決めて取り組む必要があったのでしょうが、すでに9割の農場が取り入れている現在では、技術的にも相当ハードルが下がってきているといえるでしょう。さらに雄の飼養頭数が減らせる等のメリットも加えると、積極的にAIにシフトする傾向はこれからも加速すると考えられます。
我々はこれからもMNFISとベンチマーキングデータを活用し、皆様に様々な情報をお届けしようと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(文責 技術サポート部 新田良平)