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ブロイラーの発育能力と飼養管理


ブロイラーの育種改良はどこまで続く?

まだまだ続きます、体重では年々50g前後の改良が着実に進んでおり、併せてFCR、歩留り、脂肪蓄積等、高度な経済性が遺伝能力として追及されていくでしょう。現在のブロイラーはもはや単なる鶏ではなく、人為的に作られた特殊動物と言えます。
だとすると、当然、必要な栄養、環境も変わる必要があります。増体能力の高さ→内臓機能のアンバランス→発育阻害、結果として十分な発育能力が出せない。といった現象を回避するべく、管理面での工夫を考えるできです。
今年は例年にない猛暑厳しく、まだまだ残暑厳しい中、人も家畜も大きなストレスを受けています。

ここで一つ、鶏の体質的な特徴に基づき、飼育する上でのポイントをご紹介致します。
①翼・羽毛がある。地上の捕食者から逃れるために、空を飛ぶことができるように進化した動物です。
②血圧が高い。空を飛ぶべく進化したことで、低気温と風による体温の消耗を受けるため、血液を送る量を増やしています
<血圧;ヒト成人:130~85、鶏:150~120(mmHg)>。そうすることで、鶏は体温を高く維持しています。

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家畜は体温を一定に維持するため、熱の産生と熱の放出のバランスを調節する仕組みをもっていますが、暑熱環境下では放熱の比率が高まります。鶏の場合、浅速呼吸と呼ばれ、呼気を増やすことで熱の放散を高めますが、同時に炭酸ガスが抜けてしまうことで体内がアルカリ性に傾き、調子を崩す原因となります。

特に増体が速いブロイラーでは上記のような特徴のため、暑熱の影響を受けやすい畜種と言えます。いかにストレスを軽減し、効率よく飼料を食べさせるかが夏場の生産性確保につながります。

①水の利用。飲水について、お腹の中から冷やすことが一番効果的であり最も重要。いつでもどこにいても容易に飲めるような環境が大切。飲水量の目安は飼料1kgに対し2ℓ必要ですが、暑熱下では、その2~2.5倍が必要であり量の確保に注意です。飲水ラインでは定期的な水抜きが効果的。
また、給水タンクへ氷や重曹(炭酸水素ナトリウム)の投入も効果的です。重曹はストッキング等に封入し、タンク内にぶら下げると持続的に飲水投与することができます。気化熱の活用、50ミクロン以下のスプレーノズルを用いた細霧により舎内温度を下げることができます。気化(蒸発)が必要なので、晴れた日の日中に実施することがポイント。また舎内北側と南側でノズルはチドリ型の配置が良いでしょう。

②鶏舎の工夫。舎内への熱の侵入の割合は、屋根からが70%と言われます。屋根からの熱侵入を防ぐことが効果的です。熱反射率の高い白色系が望ましく、青トタンや錆びた屋根の場合、石灰塗布が簡便な方法です。消石灰2:白セメント1を水に混合し、動噴で吹き付けると良いでしょう。
入気側に寒冷紗を設置し、さらに散水用エバーフローを用いて寒冷紗に吹き付けることで、入気の温度を下げることができます。また、日中は舎内の照明を切ることで照度を下げることが望ましい(約5lux)。明るい場合に比べ熱の産生量は半減します。

③風の利用。舎内の熱を逃がすためには換気が必要。換気は外気温と舎内の総重量によって必要量が増加します。夏場では最大0.2㎥/kg/分必要でしょう。また、風速を活用し体感温度として下げることができます。2m/秒の風速が当たることで通常より約2℃低く感じることができます。

④飼料の使い方。日中の断食により、飼料摂取によって体内から熱が発生し、舎内温度を高めることを防ぐ効果があります。時間帯は10/11~15/16時が目安となります。暑い昼間は昼寝させ、涼しい夜中に食べさせましょう。
併せて、切る時間帯は給餌ラインを上げることで、飼育密度を緩和する効果もあります。注意点として、再び給餌ラインを下げる場合は、全てのフィーダーに飼料が満たされていること。競い食いを抑えられます。

ここに示した事例はほんの一部ですが、少しでも参考にされれば幸いです。それぞれの農場立地、天候、風向等、また作業性に対応した創意工夫を行うことが必要です。夏場の熱死対策は非常に重要であり、費用がかかってもそれ以上の生産成績を上げられれば農場収益は増大します。
この残暑、また来年の夏に備え、飼養管理方法を進化させてブロイラー経営を安定させましょう。

総合研究所 開発グループ 大村勇介

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