5S活動で養豚場の衛生レベルが変わる
飼料会社の獣医師は、病気で悩む農場に出かけアドバイスを求められるケースが度々あります。お話を伺い、農場を拝見し、必要に応じて検査をします。結果に基づき、投薬プログラムやワクチネーションプログラムを見直します。正しい診断と、農場の方の日々の努力が事故率改善を導き出すでしょう。
一方で、この流れに乗りにくい農場にも出会います。事務所、サービスルーム、畜舎内外、いたるところにゴミ、不要物が散乱し、見るからに不衛生な飼育環境があります。疾病コントロール以前の問題です。
そんな農場には5S活動がお勧めです。5S活動は工場や建設現場で広く活用されてきた歴史がありますが、実は畜産の生産現場に応用すると、とても威力を発揮する取り組みだと感じています。
5S活動とは何か?
5S活動とは職場環境改善に用いられるスローガンで、5つのSは「整理、整頓、清掃、清潔、しつけ」の頭文字です。
【5つのS】
●整理
必要なものと不要なものを区別し、不要なものを処分します。農場には必要なもの以外は一切置いてはいけません。
●整頓
必要なものが誰にでも、すぐに取り出せる状態にしておきます。探すムダな時間が減り、本来の飼育管理に力が注げます。
●清掃
ゴミなし、ヨゴレなしの状態にします。この状態が作れなければ消毒の効果は上がりません。
●清潔
整理・整頓・清掃を徹底します。ここまで来て初めてバイオセキュリティを語ることが出来ます。
●しつけ
決められたことを、決められたとおりに正しく実行できるよう習慣づけます。5S活動は「努力目標」ではなく、
「業務」に位置付けします。よい職場環境を維持することは、疾病コントロールのみならず、従業員の幸せに結びつきます。
ある農場の5S活動の取り組み事例を1つだけご紹介します。2017年社内5Sコンテストで「グッドアイデア賞」に輝いた作品です。
離乳舎の通路にある洗い場です。この農場では子豚の移動時に通路を歩かせています。通常は左の状態で使用し、子豚の移動時には折りたたんで壁に収容します(右図)。
障害物がなくなったことで作業時間は短くなり、子豚移動後の洗浄、消毒も楽になりました。
5S活動を始めるきっかけは何でもいいと思いますが、「PEDを清浄化したい」とか「PRRSを清浄化したい」といった目標があるとなおよいでしょう。農場HACCPやJGAP取得前の準備活動としても好適です。
目標が達成される頃には、事故率低下や増体改善等の効果で、「収益増」の果実が得られます。従業員の意識も変わり、活気を帯びた農場に変わっているはずです。
まずは始めてみましょう。5S活動は成績改善の強力なツールです。
「目に見えるゴミの始末ができない者に、目に見えない病原体の管理はできない」
株式会社日清畜産センター 畠山知己