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乳牛のビタミン要求量を見直す


2017年10月31日にドイツにある化学品メーカーの工場で火災が発生し、世界的にビタミンA、ビタミンE、カロテノイドの供給に支障が生じるのではないかと言われております。これらビタミン剤の国際価格については、暴騰を始めており、供給および価格が落ち着くには半年ほどかかるとの見方がされています。
このような状況の中、オハイオ州立大学のDr.Bill Weissはいち早く、12月14日のFeedinfo News Serviceの中で乳牛に対するビタミンAおよびEは短期間であれば、NRC要求量の50%まで削減可能と述べ、節約を呼びかけています。
ビタミン剤が値上げになったから使用を中止するという訳にもいきませんので、最大の関心事は、どの程度まで給与量を削減できるかということになるかと思います。ちょうど日本飼養標準・乳牛の2017年版が10月に刊行されましたので、脂溶性ビタミンA、D、Eの要求量について見直してみましょう。

日本飼養標準・乳牛の2017年版.png

日本飼養標準の要求量算出方法は前版(2006年版)との間に違いはありませんでした。NRC飼養標準との比較において、ビタミンAは要求量に近似していますが、ビタミンD要求量は1/3、ビタミンEは2.5倍になっています。
しかし、ビタミンE給与量については、基礎飼料由来分を差し引いて給与するとも記載されています。粗飼料中のビタミンE含量は10~1,000IU/kgと大きく変動しますが、良質な粗飼料を使用していれば、ビタミンEを添加する必要はないということになります。
また、粗飼料中にはビタミンAの前駆物質であるβ-カロテンが含まれていますが、こちらの含有量も0~300mg/kgと大きく変動します。1㎎のβ-カロテンは400IUのビタミンAに転換されるとされていますので、こちらも良質な粗飼料をもっていれば、ビタミンAを添加する必要はないと言えます。
日本飼養標準はわが国の平均的な乳牛の標準的な飼養条件下での要求量を示したものであり、安全率を見込んでいない最小必要量だと記載されています。従って、日本飼養標準に示されたビタミンADE要求量は給与下限と考えることができます。良質な粗飼料がない場合、高泌乳や寒冷などストレスが多い場合などは、多少の割り増し給与が必要ですが、良質粗飼料とうまく組み合わせることで、ビタミンAおよびE剤としての添加量は節約することができます。

技術サポート部 大久保実

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