消毒について、再度確認したいこと
豚流行性下痢(Porcine Endemic Diarrhea;PED)は、米国でも日本でも感染拡大の勢いが止まりません。前回のトピックスではバイオセキュリティの重要性について取り上げましたが、その中でも農場で最も身近で最も頻繁に行う対策が消毒です。
しかし、消毒ほど、その細かな実施方法の違いによって、効果に差の出る作業はありません。以下にもう一度確認しておきたい消毒時のポイントについてまとめましたので、ご確認をお願いします。
1. 逆性せっけんは有機物に弱い
逆性せっけんは、PEDウイルスに対して有効です。現在現場で最も頻繁に使用される消毒薬ですが、弱点もあります。有機物の存在下では効果が大きく低下することです。PEDウイルスは糞便中に大量に排出されますので、特に農場や肉豚出荷のトラックの消毒の際には、あらかじめ水で糞便を良く洗い流すか、消毒薬での消毒の際にも、目で見て糞便が見えなくなるまで徹底的に消毒する必要があります。「糞便が残っているけど消毒しているからウイルスが死んでいるだろう。」ということは絶対にありません。親の敵のように徹底的に洗ってください。
2. 消毒薬は瞬時に効かない!
消毒薬と病原体が接触すると、その瞬間に病原体が死ぬと思いがちですが、実際の消毒現場では必ずしもそうとは限りません。ある農場では、消毒後30分はそのままの状態に保って、十分に消毒効果が発揮できてから使用すると決めているそうです。消毒薬と病原体の接触時間は長ければ長いほど高い効果が期待できます。発泡消毒も接触時間を稼ぐ良い方法です。また、消毒後の乾燥によって、最終的な消毒効果が発揮できますので、特に冬場など、乾燥させるためにジェットヒーターなどで豚舎内を暖めるのも効果があります。
3. 温度と消毒効果
一般的に塩素系やヨード系の消毒薬は20℃程度、その他の一般的な消毒薬は、温度が高いほど効果が高いといわれています。ですから逆性せっけんでの消毒の際には、水よりもお湯で消毒すれば効果はより高まります。また乾燥もしやすくなります。逆に冬場の低温時の消毒の際には、効果を補うために消毒薬の濃度を上げてやる事も有効です。用法、用量の一番濃い濃度を選択すると良いでしょう。
以上、消毒の際に確認して頂きたい事をご説明しました。消毒ほど、やり方と効果に差のつく作業はありません。同じ消毒でも、より効果の上がる方法を取りましょう。
(文責 総合研究所 検査グループ 矢原芳博)
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