PEDウイルスを農場に浸潤させないために
豚流行性下痢(Porcine Endemic Diarrhea;PED)の米国での感染拡大に続き、日本でも沖縄県、茨城県、鹿児島県、宮崎県での発生が報告されています。特に鹿児島県、宮崎県では、現在も発生農場が増加しており、1996年の大きな流行に匹敵する規模になるのではないかと心配されます。これらのPEDウイルスは、米国での分離株も含め、直近まで中国で分離されているウイルス株と非常に近縁であるという事で、どのような経緯で米国や日本に侵入したのか、現在もその感染源を探る試みは行われていますが、いまだにはっきりしたことは判っていません。
現時点では、自農場にPEDを侵入させないためのバイオセキュリティの強化が最も重要です。その中でもいくつかのポイントについて考えてみたいと思います。
1. 生豚の農場導入
PEDの農場侵入のリスクとして最も高いのは、感染した豚の農場導入によるものです。PEDの症状は、哺乳豚については非常に急性で激しいのですが、子豚、肉豚、種豚と大きくなるほど症状は軽くなります。しかし感染豚は症状を出さなくてもウイルス排出をする可能性があります。導入元農場とのコミュニケーションを良く取り、状況確認を頻繁に行う必要があります。
2. と畜場への出荷トラック
米国においても、PED感染拡大の大きな要因として、出荷トラックが危険視されています。と畜場に来たトラックの荷台を、入場前後でふき取り検査してみると、入場時は陰性であったのに、出荷を終わって農場に帰る時に陽性であったケースが数割あったという研究結果が報告されています。出荷豚をおろした後のトラックの消毒、搬入時の着衣の消毒、出荷担当者の農場での作業の制限強化など、この部分の対策強化は、やってもやってもやりすぎということはありません。
3. 農場内の小動物
自農場の地域でPEDの発生が報告された場合に、感染源の盲点となりそうなのがネズミと猫です。ネズミの場合、屋外での移動距離はそう遠くはないと思いますが、現在感染拡大している南九州の場合、農場間の距離は極めて接近しているので、要注意です。また猫を分娩舎で見かけるケースがありますが、ほとんどの場合、農場の中と外を自由に行き来しています。周囲での発生があった場合には、猫を農場内に入れない、あるいは農場の外に行けないように工夫する必要があります。
上記3ポイントの再確認をぜひお願いいたします。
(文責 総合研究所 検査グループ 矢原芳博)
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