離乳子豚の浮腫病と離乳後下痢が増えています。
朝晩の寒暖の差が激しくなってきましたが、養豚場の子豚には温度差を出来るだけ感じさせない管理が求められます。このような気候の中で、浮腫病あるいは離乳後下痢の発生が全国的に目立ちつつあるようです。毒素原性大腸菌による浮腫病や離乳後下痢については、この紙面でも過去に何回かご紹介していますが、皆様への注意喚起の意味でも、再度ご紹介をしておきたいと思います。
浮腫病になるか離乳後下痢になるかは、毒素の違いで決まります。
浮腫病も離乳後下痢も、いわゆる毒素原性大腸菌によって発生する病気ですが、症状の違いはどこで決まるかといえば、大腸菌が産生する毒素の違いによります。浮腫病を起こす大腸菌は「志賀毒素」、下痢を起こす大腸菌は「エンテロトキシン(腸管毒素)」を産生します。さらにこの両方の毒素を持つ大腸菌も最近は良く見られます。その場合、浮腫症状と下痢が同時に離乳舎で見られます。
離乳子豚にしか見られないのはなぜか?
浮腫病も離乳後下痢も、一般的には3~15週齢の子豚だけに発症する病気ですが、その理由は、この病気を起こす大腸菌が、毒素の他に「F18」という吸着因子を持っているからです。それぞれの「吸着因子」は、小腸の粘膜の特定の目印を選んでくっ付くのですが、「F18」が選ぶのは、離乳豚の小腸に、一時期にしか現れない目印です。この目印は離乳した子豚に突然現れ、子豚期以降には消えてしまいます。このため浮腫病や離乳後下痢は特定の一時期にしか発症しないのです。
抗菌性物質での治療には注意が必要
浮腫病や離乳後下痢が発生した場合には、多くの場合感受性抗菌性物質による治療を行うと思いますが、ここで一部の抗菌性物質を使用すると、体内で増殖した大腸菌の中に蓄積された毒素が一気に放出されて逆に死亡が増加してしまうケースがあります。抗生物質の選択には注意が必要です。
適切な治療のためには、迅速で適切な診断が必要です。
このように突如として発症する浮腫病や離乳後下痢の治療には、特に注意を払うべき事柄があります。まずは、今農場で起きている病気が浮腫病や離乳後下痢なのか、それ以外の病気なのかを出来るだけ早く判断する必要があります。我々検査グループでは、大腸菌がどのような毒素を出しているのか、どのような吸着因子を持っているのかを的確に判断する検査を実施して、適切な対策をご提案しています。離乳舎で気になる症状を発見したら、できるだけ早めのご相談をお願いします。
(文責 総合研究所 検査グループ 矢原芳博)
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