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冬は豚を濡らさないで!

今年の冬は例年と比べ全国的に寒い冬でした。各地の農場で寒さによる問題が例年以上に起きているようです。冬場の疾病としては呼吸器病がまず挙げられますが、それだけではなく、繁殖への悪影響も起きているようです。

舎内温度を適正な温度幅に制御する事が基本ですが、豚舎構造の問題などで、必要な換気量をとると温度が保てないという豚舎も多いのではないかと思います。

ただでさえ、理想的な舎内温度が保持できないところに、豚の身体が濡れていたりすれば、体感温度は極端に下がり、健康被害が急増します。農場を巡回していると豚が濡れているのを目撃するケースは思いのほか多いものです。今回は豚を濡らさないためのチェックポイントをいくつか挙げておきたいと思います。

子豚の濡れを防ぐ

(1)平床での豚の濡れ

一般に子豚に対しては、全面スノコやメッシュよりも平床があった方がストレスは少ないと考えられていますが、冬場にその床が濡れているとむしろ逆効果です。床の濡れは、すきま風から来るケースが多いので、床を汚している豚房に入ってみて、すきま風が吹き込んでいないかチェックをしてみてください。ほんの微風であっても、子豚には堪えるものです。見つかったすきま風の原因部分はこまめに修繕が必要です。

(2)閉じ切り過ぎていないか

子豚を暖めたい一心で、豚舎内の換気を怠っていないでしょうか?密閉度の高い豚舎ほど、意識して換気量を取らないと舎内に湿度がこもります。豚は大きくなるほど温度と水分を発散するものですから、暖めすぎで豚が蒸れているケースも見かけます。このような場合、室温が高くても舎内に風が吹いていれば豚は寒く感じます。お風呂に入っていて換気扇を回すと寒いのと同じです。湿度は低すぎても高すぎても問題です。

母豚の濡れは流産に繋がる

子豚に比べ母豚は寒さに強いと思われがちですが、寒すぎは繁殖成績に影響を及ぼします。室温ひと桁台の状況で豚が濡れていればなおさらです。特に妊娠豚が腹回りを冷やすと、腹部の血管が収縮して、胎児への血流が不足し、生時体重の減少や流産の原因となるといわれています。妊娠ストールの床面の傾斜が悪く、給水器からの水が母豚の腹に流れていくケースを良く見かけます。床の傾斜の改善工事が望まれますが、当面の対策としてはオガ粉をこまめに敷くなど、母豚の腹を乾かしてやる配慮が必要です。常に風が入り込む豚舎では、母豚舎といえどもビニールカーテンなどを設置して保温対策を行う必要があります。

母豚を濡らすな!というキーワードには、ひとつだけ例外があります。それは母豚を分娩舎に入れる前に行う豚体消毒です。これは温湯で行えば、豚から驚くほどの湯気が出て、その後ちょっと置いておけばすっかり乾いてしまいますので、冬場であっても行うべきと思います。豚にとっては、一時的な濡れではなく、継続的にずっと濡れていることがストレスに繋がるのです。

もう春がすぐそこまで来ているのかもしれませんが、急な冷え込みは、これからしばらくは起きる可能性があります。特に気温差の大きい時に豚が濡れていると、ストレスは、より大きくなりますので、本格的に暖かくなるまでは豚を濡らさないようにご注意ください。

(文責 総合研究所 検査グループ 矢原芳博)

総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514

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