技術情報Technical Info

インフルエンザウイルスにご注意を

インフルエンザウイルスによる子豚、肉豚の呼吸器症状や母豚の流産の集団発生については、このコーナーでも何度か取り上げていますが、最近の養豚現場からの症例報告を見ていますと、我々が想像しているよりも影響を受けているケースが多いのではないかと考えさせられます。ここでもう一度豚インフルエンザウイルス感染症についてまとめてみたいと思います。

インフルエンザウイルスは、ヒトをはじめとして多くの動物種に感染し、世界中に存在します。このウイルスはA型、B型、C型の3種類に大きく分類されますが、豚はA型のみに感染するといわれています。A型インフルエンザウイルスに豚が感染すると、同じ群の豚がほぼ同時に元気、食欲がなくなり、高い熱を出して激しい咳をします。インフルエンザウイルス単独での感染では、死亡率は低く、感染をしても症状をまったく現さないことも多いといわれていますが、他の細菌性あるいはウイルス性の呼吸器病の2次感染を受けると高い事故率になってしまう場合もあります。また妊娠中の母豚が感染すると、流産を起こすこともあります。

インフルエンザウイルスにはいろいろな亜型が存在し、遺伝子変異が激しいといわれていますが、養豚場においてインフルエンザウイルスによる疾病が発生し、それに対処を行う場合、亜型や遺伝子変異の事はとりあえず横において、取るべき対応を考えて見ましょう。

養豚場におけるインフルエンザウイルス対応の基本

インフルエンザウイルスの場合、感染してから体内で免疫が発動し、やがてウイルスが体内から排除されるまでの期間は比較的短いと言われていて、個体のレベルでは1週間程度が目安になると言われています。これはPRRSウイルスやサーコウイルスと比較すると非常に短いため、浸潤を受けたとしても、浸潤直後から外部との接触を絶っていれば、そのうち農場内からウイルスが居なくなります。例えば肉豚舎でインフルエンザ様の症状が出た場合でも、他の豚舎との隔離がうまくいけば、肉豚舎だけで感染を食い止めることも可能なはずです。

また豚インフルエンザの症状は、2次感染の有無に大きく影響されるので、細菌の2次感染を予防する意味で抗菌性物質の添加も有効です。

豚インフルエンザウイルスによる呼吸器症状や異常産が秋から冬の季節に繰り返し起きる場合には豚インフルエンザワクチンの接種も選択肢の一つです。ここ最近では、母豚への一斉接種や子豚肉豚への2回接種をプログラム化する農場も増えてきています。

そして、ヒトのインフルエンザウイルスが豚に感染する可能性があることから、農場関係者が感染したら1週間程度は豚舎に入らないことが大事です。関係者も毎シーズン、ヒトのインフルエンザワクチンを必ず接種しましょう。

本病は、一度発生すると短期間で大きな被害になることもあり、油断できない疾病のひとつですが、農場で発生した場合、原因をはっきりと特定できていない場合が多いようです。疑わしい症状が見られたときには、症状が治まった後に抗体検査を行えば、インフルエンザが動いたかどうかを確認することができます。普段から定期抗体検査を行ってインフルエンザの農場内浸潤を確認しておけば、このような時に更に精度の高い診断を下すことが出来ます。豚に関してはインフルエンザの感染は通年で起きますが、他の細菌感染症との混合感染を受けると症状が重くなることから、冬場に重篤な症状を起こす危険性が高いとも言えます。今年の冬は特に厳しい寒さが続いていますので、頭の隅にインフルエンザウイルスのことを置いておいてください。

(文責 総合研究所 検査グループ 矢原芳博)

総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514

一覧へ