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浮腫病に注意が必要です

このコーナーでも過去に何回か取り上げてご紹介している浮腫病ですが、ここ最近各地で発症しているようです。そこで今回、浮腫病について再度まとめてみたいと思います。農場内での浮腫病症状の確認の一助になれば幸いです。

浮腫病の原因菌は志賀毒素産性大腸菌

浮腫病は、志賀毒素という毒素を産生する大腸菌が離乳後の豚の腸管で増殖し、毒素が体内をめぐって起きる、「毒素血症」です。病原性の大腸菌の表面には線毛というものが生えている事が多く、浮腫病を起こす大腸菌にはF18と呼ばれる線毛が生えている事が多いようです。この線毛は、生後約3週齢以降の離乳期の腸管にしか定着できません。このため浮腫病は離乳後の約2ヶ月間程度の間にしか発生しないのです。

浮腫病の主要症状は、浮腫、急死、神経症状

浮腫病の「浮腫」と言う言葉は、皮膚の下に水が溜まる(水腫)ことを言います。体表の柔らかい部分に水が溜まると、ぷっくりと腫れるのですが、特に目の周りで非常に目立ちます。これを「眼瞼浮腫(がんけんふしゅ)」と言い、浮腫病の代表的な症状になります。

ただ、浮腫病の発生農場の多くでは、このような典型的な症状が見られず、離乳豚が急死するケースが多いようです。これは志賀毒素の急性の中毒症状ですが、特に群内の発育の良い豚が、何の症状も無く急死するのが特徴です。

時として、浮腫、急死といった症状と共に、神経症状を示す場合があります。離乳豚に神経症状を起こす病気は、他にもレンサ球菌症、グレーサー病などがありますが、これらの病気を神経症状だけで区別するのは不可能です。上記のような症状が見られた場合には、死亡豚の細菌検査などを行い、原因を特定した上で、対策を打つべきです。

抗菌性物質での治療には注意が必要

上記のような症状が見られ、志賀毒素産生大腸菌が原因であると診断されたら、多くの場合感受性抗菌性物質による治療を行うと思いますが、ここで一部の抗菌性物質を使用すると、体内で増殖した大腸菌の中に蓄積された毒素が一気に放出されて逆に死亡が増加してしまうケースがあります。抗生物質の選択には注意が必要です。

このように、まだまだ猛威を振るう浮腫病ですが、その対策はある程度整理されつつあります。重要なのは、なるべく早い段階で確実な診断を受ける事です。

(文責 総合研究所 検査グループ 矢原芳博)

総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514

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