豚の世界でも新しい病気の出現?
前回号で、ヨーロッパで発生している牛の新しい病気についてご報告しましたが、養豚の世界でも、アメリカの一部の地域で新しい疾病が発生しているという情報があります。まだ分からない事の多い病気ですが、ここで今までわかっていることについて整理してみたいと思います。
病気の名前はPFTS
この病気は、数年前からカナダ西部や合衆国ミネソタ州、カンザス州でいくつかの報告があり、いろいろな名称で呼ばれていましたが、2010年の世界養豚獣医学会(IPVS)で、Peri-weaning failure to thrive syndrome (PFTS)と呼ばれるようになりました。直訳すれば、「離乳近くで発育が悪くなる症候群」ですが、日本での報告はまだ無いので正式な日本の病名はついていません。しいて言えば、「離乳後発育不全症候群」となるでしょうか。このコーナーでは取り合えずPFTSと呼ぶ事にします。
離乳後1週間程度の子豚が餌を食べなくなり衰弱して死亡する。
北米でのいくつかの報告によれば、この病気の典型例では、離乳時にはごく健康であった子豚が、離乳後1週間くらいから活力が無くなり、餌を食べなくなり、だんだんと衰弱して死亡するか、そのままヒネ豚として発育遅れで淘汰対象になるなどの被害がでるようです。また特徴的な症状として、ボーとした状態で口をクチャクチャと動かすともいわれております。
しかし上記のような特徴症状だけでは、現場ではPRRSウイルスやサーコウイルスによる症状とも区別がつきにくいと思われます。今までの報告では、PRRSやサーコウイルス2型などの影響の無い事が確認された上で上記のような症状で生産性が悪化するという事です。
原因は未だに不明
このPFTSの原因について、様々なアプローチがなされているようですが、未だにこれだという結論には至っていないようです。報告のある北米でも、まだ養豚業界全体を脅かすような状況ではなく、局地的な発生の段階であるという事ですし、日本でも報告はありません。しかしPRRS、サーコウイルスに次ぐ新しい生産阻害要因として、今後猛威を振るう可能性もあり得ますので、PFTSにまつわる情報について収集を続け、今コーナーでも適宜お知らせして行きたいと考えております。
(文責 総合研究所 検査グループ 矢原芳博)
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