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ヨーロッパで発生している牛の新しい病気

昨年11月に、ドイツの研究所が、牛の新しいウイルス病がドイツで発生している事を公表しました。そのウイルスは、シュマレンベルクウイルスと呼ばれ、現時点で欧州8カ国(ドイツ、オランダ、ベルギー、英国、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、スペイン)で発生が報告されています。この病気について、現在までに分かっている事を簡潔にまとめてみました。

病気の始まりはドイツとオランダの乳牛

この病気は、昨年(2011年)の夏にドイツやオランダで乳牛が、高熱(40℃以上)、食欲低下、乳量低下などの症状を示した事が発端です。これらの症状は数日間で回復するそうですが、このような症状が9月以降ドイツを中心に増えていったと言うことです。11月に入って、同様の症状を示した牛の血液から今まで報告されていないウイルスが発見され、採取された地名にちなみ、「シュマレンベルクウイルス」と命名されました。

このウイルスによって病気を起こす動物は偶蹄類で、今のところ、牛、羊、山羊、バイソンでの報告があります。また感染した動物だけでなく、生まれてくる新生子にも異常が見られます。特に羊、山羊は牛で見られるような症状は無く、産子の異常だけが報告されています。

この新しい疾病は昨年秋以降、欧州の各地で報告されるようになり、現時点では、上記の8カ国での報告となっています。欧州以外の地域では発生は無く、もちろん日本での発生も報告されていません。

ウイルスは蚊によって媒介される?

シュマレンベルクウイルスは、ブニヤウイルスというウイルスの仲間ですが、同じ仲間の中には、日本で似た症状を示すアカバネウイルスやアイノウイルスがいます。これらのウイルスは、蚊によって媒介される事が知られており、ごく最近の研究では、ヌカカから本ウイルスの遺伝子が確認されたという事です。これらの事実から、この病気は蚊によって媒介される病気の一つであると考えられています。

また新たな病気の発生!

このように、今まで知られていない新しい感染症の事を、新興感染症(エマージングディジース)と呼びます。本病は現在進行形でヨーロッパの各国に広がっていますが、ここ最近のインターネットの普及で、その情報を世界中の人たちが割と簡単に知ることが出来ます。これ以上日本に新たな病気を入れないためにも、本病の情報に注目したいところです。

(文責 総合研究所 検査グループ 矢原芳博)

総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514

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