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酷暑期の暑さ対策について

今回も暑さ対策についてです。前回は特に雄の対策について触れましたが、今回は母豚について、しかもこの時期の暑さ対策ですから、予防策ではなく、「それでも暑さで豚がバテた時」の対処法についてです。

まずはどうやって母豚を冷やすか。

用意周到な養豚場の方々は、すでにこの時期、豚舎の屋根に石灰を塗り、豚舎の西側には、寒冷紗やグリーンカーテン(最近はゴーヤが流行?)などを設置し、舎内には、順送ファンや工場扇を設置して万全を期していると思われますが、それでも母豚が暑さでまいってしまう事もあり得ます。こんな時は、まず水で母豚を冷やすしかありません。

水で母豚を冷やす方法

(1)文字通り身体に水をかけて冷やす。

妊娠ストールや分娩ストールでへばっている母豚には、ホースで身体に水を掛けてやります。水は後脚から臀部→体幹部へ、徐々に身体の中心に向かって掛けます。いきなり腹部を冷やすと、逆にショックで流産してしまう可能性もあるので、徐々に、しかし充分量掛けます。水の量が少ないと、かえって蒸してしまい逆効果になるので要注意です。身体を触りながら充分に冷えたことを確かめながら行いましょう。

(2)同時に水を飲ませましょう。

暑がって立たない豚は、水も飲みません。いくら低いところに給水ピッカーが付いていても、頭を動かそうとしません。こんな時に、やはりホースを伸ばして口に水を掛けてやると、ゴクゴクとうまそうに勢い良く水を飲むことがあります。母豚は、のどが渇けば自分で水を飲むとは限りません。無理やりにでも1日何回か水を飲ませるだけで状態がぐっと回復する母豚も多いものです。口から水を入れてやることで、体内から身体を冷やす効果も大きいものです。

(3)緊急時には、肛門から注水

呼吸がかなり荒く、体温が40℃を超えるような緊急事態の豚には、肛門にホースを差し込んで、ゆっくりと水を注入してやります。水量は少しずつ、でも充分量を注入して、腸管内部から冷やしてやります。うまく体温が下がれば、呼吸数や喘ぎが見る見る少なくなります。
いずれにしても、すべての母豚に届くように、分娩舎と妊娠舎、交配舎には、蛇口とホースを適宜準備しておくべきです。念入りな農場は、すべてのストールの給水器の配管に蛇口をつけているところもあります。これを使えば、飼料給与後に、飼槽に水を張るのも簡単です。

(4)普段から飲水量を上げる工夫を

上記のように具合が悪くなる前に、母豚には、特に夏場には充分な水を飲ませる工夫が大事です。上記のように給餌後に飼槽に水を溜めて飲ませたり、常時、一定の水位に水がたまる給水器を設置するのも効果的です。特に分娩舎では1日20リットル以上、夏場は30リットル以上飲ませるのが理想です。

以上、母豚を冷やして夏場を乗り切る水の使い方について述べました。できる事から取り入れていただければ幸いです。

(文責 総合研究所 検査グループ 矢原芳博)

総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514

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