今年こそは種豚への夏場対策を間に合わせよう
つい先日まで、寒さ対策の話をしていたのに、今年ももうすぐ夏がやってきます。昨年の夏の暑さは激しく、多くの養豚場で繁殖障害が発生しました。今年はその轍を踏まないためにも、今から夏場対策をはじめなければ間に合いません。もう時間はあまりありません。今回は雄豚に対する対策について御説明しましょう。
雄豚対策が最重要
もちろん雄、雌両方共に大事なのですが、雄豚は一般的に雌豚よりも暑さに弱く、特にデュロック種は非常に暑さに弱いといわれています。本交で雌に乗らない、人工授精で知らぬ間に精液が悪くなっているなど、一度雄がやられてしまうと、受胎率や産子数に重大な影響を及ぼしてしまいます。妊娠確認ができるのは、種付け後最低でも21日以上かかりますから、場合によっては雄の精液がおかしいことに気付くのに3週間以上もかかってしまうこともあり得ます。このように、雄が夏バテしないような対策を先取りして打つことが繁殖成績アップの非常に大きな鍵となるのです。
雄豚対策の具体例
(1)屋根からの暑さを防ぎたい
雄には農場内のもっとも快適な場所を与えるのが定石ですが、雄がいる豚舎の屋根には、断熱材は入っていますか? 南九州では、交配舎の屋根がスレート波板一枚でしかも低い、という構造をよく見かけます。真夏の昼間、屋根の内側付近では50℃を越えるケースも少なくありません。断熱材付きのガルバリウム鋼板を既存の屋根の上にさらに取り付けて断熱する方法も見かけます。お金を掛けないなら、消石灰を水で溶いて、屋根や壁を真っ白に塗装するのも効果的です。石灰塗布に最適化された商品も出回っていますし、白セメントや建築用ののりを加えることでより剥がれ難く工夫しているケースもあります。
(2)風と水で体感温度を下げよう
豚舎内で雄を積極的に冷やすのには、やはり風を送るのが一番手っ取り早い方法です。メーターファンやダクトファンなどを設置することが多いと思いますが、何もないなら、ホームセンターで売っているいわゆる「工場扇」でも良いと思います。3本脚の自立式や、天井の柱などに取り付けるタイプなど、いろいろあります。
畜産用のクーラーもいくつか発売されています。豚にクーラー? と思われるかもしれませんが、雄豚がヘタッたときのことを考えれば妥当な投資といえます。クーラーといっても、クーリングパッドなどを使用したものが多く、一考の価値はあります。
また送風の際に、豚を濡らすとさらに体感温度が下がります。専用の配管して水を滴らせる方法が一般的でしょうが、数年前から話題になっている、凍らせたペットボトルもとても良い方法と思います。ただ、ポイントとしては、風も水も、豚がいやなときには逃れられるようにすることです。雄豚房はある程度の広さがあると思いますので、豚房内に風や水が当たらないスペースができるように調整してください。
(3)種付けや採精直後の睾丸を冷やせ
種付けや採精の際に、睾丸は熱を持ちます。これを放って置くと睾丸が炎症を起こして、精子の質が回復しなくなります。夏の終わりに左右の睾丸の大きさが違っている雄を見かけたら、睾丸炎を起こした証拠です。少なくとも精液のチェックは必ずしましょう。予防策は、種付けや採精後に、ひたすら睾丸を冷やしてやることです。数分間、ホースで水をぶっ掛けると良いのですが、途中で雄が逃げ回るのが難点です。スポーツショップなどで売っている冷感スプレーを使っている農場もあります。
(4)元気をつけて夏を乗り切ろう
人間も夏バテ防止にニンニクを食べたり、スタミナが付くものを食べたりしますが、雄豚にもその発想でいろいろな物を飼料と一緒に与えるのも効果的です。宣伝で恐縮ですが、当社では「雄豚の友」というサプリメントを発売しております。ニンニクやセレン酵母、ビタミンなどで雄に元気を出してもらいます。
以上、雄豚の夏場対策を紹介しました。これらの対策は、暑くなる前からとっておく必要があります。また、一見夏バテしていないように見える雄でも精液性状が悪くなっているものもいます。夏場の雄の精液確認は、本交中心でもぜひ必要です。
(文責 総合研究所 検査グループ 矢原芳博)
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