PRRSが再び活発化の予感
サーコウイルス2型(PCV2)に対するワクチンが多くの農場で使用されるようになって、PCV2による症状だけでなく、PRRS(豚繁殖・呼吸障害症候群)による離乳後事故率の上昇や早産などの繁殖障害も、かなり沈静化してきた感触がありました。しかし昨年後半から、いくつかの地域でPRRSが原因と考えられる症状が多発し、事故率も上昇傾向にあるという情報が入っています。この事について、いくつかの点を確認しておきたいと思います。
PRRS特有の症状とは
PCV2とPRRSウイルスによる離乳後子豚の症状を農場で明確に区別する事はできません。これらの2疾病は、さらに他の細菌感染症も伴って、複合的に感染しているので、多くの場合、各々の特徴病変が混合して現れるからです。しかしここ最近聞かれるのは、サーコワクチン接種後、PCV2の動きは抑えられた状態で、かつてのPRRS特有の症状が現れているようです。
オープン豚舎の場合のカーテン操作は、特に舎内の最高温度を上げないように、日中に思い切って換気をとることがポイントとなります。この調整は、朝の管理時、夕方の管理時だけでなく、一日に何度も、舎内の様子を見ながらこまめに行わなければなりません。数時間のうちに舎内温度が急に上がったり、風向きが変わって冷風が吹き込んでいたり、環境の変化は、驚くほどすばやく現れます。
PRRSに特徴的な症状として、
- 症状が主に離乳舎に集中して見られる事
- 呼吸器症状が強く現れる事
などが挙げられます。
これらの症状の違いに加え、抗体検査や死亡豚の病理検査などの臨床検査を組み合わせて事故の原因を探っていきます。特にPRRSの抗体検査(ELISA)で離乳豚がS/P比で2を超えるものが高率に見られる場合には要注意です。
「高病原性PRRS」はまだ日本では報告されていない
「高病原性PRRS」とは、ここ数年中国南部を中心とした東南アジア各国で発生している、特に病原性の強いウイルス株によるPRRSですが、これは従来のPRRSウイルス株とは違った特徴を持つことが知られています。しかし、日本国内でPRRSによる事故が増えているという情報の中で、この「高病原性PRRS」がすでに日本に侵入しているという噂を耳にします。しかし現時点では、「高病原性PRRS」が日本で発生したという正式な報告は今のところ見当たりません。
このような噂に浮き足立つことなく、従来から言われているPRRS対策を基本に戻って実行することが重要です。
(文責 総合研究所 検査グループ 矢原芳博)
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