PCV2ワクチン接種後の衛生対策のポイント その3
PCV2ワクチン接種後の衛生対策のポイントの3回目です。
4. 離乳舎で浮腫病やレンサ球菌症が増加したら。
離乳舎で浮腫病やレンサ球菌症が増加する場合があります。これはPCV2ワクチンが効いていないのではなく、もともと農場に存在したこれらの疾病が、PCV2ベースの疾病が治まったために、再び目立ちだしたものと考えられます。したがって以下の点に留意する必要があります。
(1)離乳舎での死亡が大腸菌症なのかレンサ球菌症なのかを調べる。
同じ神経症状でも、大腸菌症かレンサ球菌症かによって使用する抗生物質が全く違います。これを間違えると症状は逆にひどくなる場合もあります。たとえば、レンサ球菌による神経症状には、初期症状ならペニシリン系の抗生物質が良く効きますが、志賀毒素産生大腸菌による神経症状の場合は、ペニシリン系の抗生物質を投与した翌日から子豚が逆に死んでしまうことがあります。これら症状の見極めは、熟練した獣医師でもなかなか難しいものです。まずは検査を行って、原因をはっきりとさせておくことが重要です。
(2)生菌剤や有機酸の飼料添加も有効。
特に大腸菌症の場合、抗生物質だけでなく生菌剤や有機酸などにより腸内の環境を整える事で、改善される場合があります。このような対策は、かつて浮腫病が流行した時には、多くの農場で取り組まれていましたが、PCV2ワクチン接種により、事故が減少したために、中止してしまっているケースが多いのではないでしょうか。再チャレンジしてみて下さい。
以上、最近、PCV2ワクチン接種農場で見られる、疾病対策のポイントについてまとめてみました。特に重要なのは、事故低下後の飼育密度上昇をいかに抑えて、適正な飼育密度を保つかという問題です。稼動母豚数の適正化にはすぐに取り組む必要があります。またこれが間に合わない場合には、子豚出荷や肉豚を他の農場に預託に出すなどの方法も有効です。またPCV2ワクチンにより免疫抑制の無くなった豚は、今までよりもずっと代謝量が増え、必要な換気量も増えています。PCV2で事故が多発していた時よりも意識して換気量を増やす必要があります。また、他病への対策に対しても抜けがないか再チェックが必要です。これらの点に留意してPCV2ワクチンの効果を確実に生産性の改善に繋げて頂きたいと思います。
(文責 検査センター 矢原芳博)
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