技術情報Technical Info

母豚のワクチンを無駄にしていませんか?

数の農場から寄せられました。母豚が流産や異常産を起こす原因としては、

  1. 感染性のもの(パルボウイルスや日本脳炎、PRRS、トキソプラズマなどの病原体の感染)
  2. 非感染性のもの(母豚のホルモン分泌の異常、飼養環境の問題)

の大きく2つの分類が考えられます。

検査センターでは、母豚の血液や流産胎子などから感染性の異常産に関する検査を実施しています。今回のお話は異常産の原因とは直接関係がないかもしれませんが、これらの検査の結果を見ていて気になる点として、同じ農場内の母豚の血液から抗体検査をしても抗体価に大きなバラつきが見られるという問題についてです。例えば、日本脳炎の抗体価を調べてみると同じ産次の母豚なのに、とても高い抗体価の母豚もいれば、非常に低い抗体価の母豚も見られる状況です。

母豚の抗体価がバラついている(揃っていない)ということは、母豚の免疫状態がバラバラな状態ということです。子豚の免疫は(主に初乳を通して)母豚の免疫状態に大きく左右されますので、母豚の免疫がバラバラな農場は、多くの場合子豚の免疫もバラバラになってしまいます。このような全体的に免疫状態がバラバラで落ち着いていない農場では、様々な病気が流行しやすい状況にあるといえます。発生した病気に対して抗生物質を使用したり、ワクチンを接種したりするのももちろん必要なことですが、根本的に農場の病気を抑えるためには、母豚の免疫状態の安定化を進める必要があります。

検査結果で母豚の抗体価がバラついている農場にお話を伺ってみると、「ワクチンは打っているけど...」という答えが大半です。ワクチンを接種しているのに抗体価が上がらないということは、ワクチンが体内に入っていないのではないでしょうか?現在市販されているワクチンは、接種時期と接種法をきちんと守れば確実に効果が現れるものばかりです。接種時期に関してはそれぞれの農場で異なってきますので、最寄りの獣医師への相談の上、決める必要があります。接種方法については、「必要量を接種部位(の体内)に確実に入れる」ことをもう一度、再確認することをお勧めします。農場によっては時間を競うように早くワクチン接種作業を終わらせているところもあるようです。母豚のワクチンは決して安価なものではありませんし、それが打ち方によっては無駄になってしまう場合もありますので、いま打っている母豚のワクチンが、将来生まれてくる子豚を守るんだ、と心に念じながら一頭一頭確実に接種しましょう。

(文責 検査センター 鶏尾めぐみ)

総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514

一覧へ