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体温を測ろう!

皆さんは動物の健康状態を見極めるのにどのような指標を用いていますか。最も一般的なのは飼料摂取量でしょうか。どんな動物でも餌喰いが落ちるのは体調悪化の第一の兆候です。その他、立ち上がってこない、毛づやが悪い、皮膚が白い(貧血)、毛が長い...等々、細かく観察すると動物が出しているサインはたくさんあります。しかしこのようなサインに気付かない、あるいは気付いていたのになんとなくそのままにしておいて手遅れになった、というケースは実際の現場ではよく見られます。

そんな時、動物の体温を測ってみてはいかがですか。既に実行されている方々には、「当たり前の事を言うな」と怒られるかもしれません。しかし体温計を持っていない農場、あるいは、あったはずだけどどこに行ったのか判らないという農場も少なくないのではないでしょうか。また、「ガラス製の水銀計は、肛門に入れて動物が暴れると割れてしまう。」あるいは「肛門に入れたまま一分間も待ってられない。」とおっしゃるか方もいると思います。

でも最近は、ペット用の体温計で家畜に応用可能なものがたくさん出ています。人間用のデジタル体温計では温度帯がずれていて正確な測定が出来ない事がありますが、犬猫用であれば使用可能です。測定部分が樹脂製で弾力があり、動物が暴れても問題なく測定できるタイプや測定時間が数十秒から数秒のものもあり畜産農場でも充分に応用可能です。しかもこれらの体温計は、インターネット上で安いものでは1,000円を切っているものもありました。但し牛や豚の場合、耳で測定するタイプは正確に測れない様ですのでご注意ください。

家畜の中には、目に見える兆候がなくても体温が上昇しているものも多く、体温を測る事で早めの対策に取りかかれるケースが少なくありません。また逆に低体温の動物も何らかの体調不良を起こしていることが考えられます。体温測定を習慣付ける事で早期の対処が可能になります。農場巡回時には体温計を首からぶら下げて、いつでも測定できるようにしてはどうですか。

なお、このような個体毎の体温測定は牛や繁殖豚には有効な方法ですが、子豚や大群飼育している肥育牛には難しいかもしれません。しかし最近、ポータブルのサーモグラフィーが家畜用に開発されたようです。人でSARSが流行した時、空港の入国管理で発熱した人を探すのに使われていたものと同じで、体温の高い人(動物)はモニター上で赤く表示されます。まだまだ高価ではありますが、動物だけでなく環境の温度も測定可能です。これを携帯して畜舎を巡回し、熱射病の牛を早期発見したり、ペン内で発熱している子豚を早期隔離したりするのが一般的な時代が来るかもしれません。我々も近々どこかの農場でこのサーモグラフィーを試して見たいと考えています。

(文責 検査センター 矢原芳博)

総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514

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