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豚サーコウイルス2型って何?(その3)PCV2の診断はどのように行うか

巷ではあちこちでサーコウイルスによる被害の話を聞きますが、必ずしもしっかりとした診断を行っていないケースも多いようです。農場内で発生している疾病の主因がPCV2であるというためには以下のような条件が必要です。

1.個々の豚をPMWSと診断するための3条件とは?

離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)は病名のとおり、離乳後に複数の臓器の機能が悪化して、発育が極端に悪くなる疾病ですが、生産現場では似たような臨床症状を示す疾病はたくさんあります。アイオワ州立大学のDr. Sordenらは、PCV2によるPMWSであることを診断する条件として

  1. 離乳後に発育不良を起こし、その症状がどんどん進行する
  2. 病理組織検査で特徴的な病理変化(葡萄房状の封入体等)が見られる事
  3. 病変部位からある量以上のPCV2が検出される事

の3つを提唱しています。

逆に言えば、生産現場において、病豚を目の前にしてPMWSを診断する事は専門家でも非常に難しい事だといえます。

2.農場単位でPMWSが発生していると診断する目安は?

農場内でPMWSが問題となっているかどうかを判断する事は、個々の豚を診断する事以上に難しい事です。というのも、PCV2の農場の抗体陽性率は、日本でも90%を越えており、ほとんどの農場内でPCV2の感染が起きているのが現状ですが、抗体陽性の農場のすべてでPMWSが発症している訳ではないからです。ですから単純に抗体検査をして、うちの農場はPMWSがある、という判断は出来ないわけです。
これまでに様々な農場陽性の定義というものが提唱されていますが、動物衛生研究所の川嶌らによれば

  1. 通常の範囲を超えた削痩を主徴とする疾病の発生
  2. 個体でのPMWSの確認
  3. 削痩や死亡の原因となるほかの病原微生物の確認
  4. 流行型、常在型、散発型の分類

の4段階を経て農場のPMWSを診断する事を提唱しています。

3.PMWS対策は、まず的確な診断から

PCV2が原因と考えられているPMWSという疾病は、まだまだわかっていない事が多く、分からない事が多いということは診断する事も難しいという事です。PRRSの時もそうでしたが、しっかりとした診断をしないまま、様々な症状をPMWS(PRRS)のせいにして諦めてしまったり、誤った対策に走ってしまったりする事も時々見かけられます。まずは的確な診断を下す事から対策の第一歩が始まります。

*今回の情報はピッグジャーナル07年3月号の川嶌先生の記事を参考にさせて頂きました。診断定義の語句については一部平易な表現に変更しました。詳しくは原著をご参照ください。

(文責 検査センター 矢原芳博)

総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514

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