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豚サーコウイルス2型って何?(その2)PCV2が原因と考えられている疾病について

前回から豚サーコウイルス2型(PCV2)について、現時点での情報をまとめておりますが、今回は、PCV2が原因と考えられている疾病について整理したいと思います。

1.PMWS(離乳後多臓器性発育不良症候群;いわゆるヒネ症候群)

PMWSは1990年代後半にカナダで発見され、その後北米に広がり、フランス、スペインを初めとした欧州各国でも報告されています。PCV2が原因と考えられる最初の疾病として知られています。現在では世界各国で発生が確認されており、日本でもその発生率は高いといわれています。
離乳後に発症し、食欲や元気が消失して削痩が始まり、発育が停滞あるいは、逆に体重減少を起こし、1ヵ月足らずで同一ペン内の子豚の体重差が著しく大きくなってしまいます。事故率も増加し、離乳後事故率では10%を越え、ひどい場合には単月で50%を超える農場もあります。PCV2は免疫抑制を起す事が知られていますが、このためにPMWSは2次感染を伴う事が非常に多く、被害が大きくなる傾向があります。PCV2がリンパ節で増殖する事から、リンパ節の腫大や出血などの病変が特徴的です。黄疸症状を伴う事もあります。ヒネ豚の体表が黄色く見える時はPMWSの可能性があります。

2.PDNS(豚皮膚炎腎症症候群)

離乳~肥育期にかけて体表に紫斑状の発赤が現れ、症状の重い豚は死亡します。解剖すると腎臓には典型的な点状出血が見られます。

3.PNP(増殖性壊死性肺炎)

PCV2による肺炎は外見的あるいは剖検上で特徴的な病変は無いのが普通です。通常は同時に感染している病原体による病変が表面上に現れますが、特にPRRSウイルスとの共感染で、組織病変として増殖性壊死が見られます。

4.その他のPCV2が関与していると思われる疾病

それ以外にも、PCV2が関与していると考えられている疾病は多岐に渡り、流産(妊娠早期)や下痢の報告も確認されています。さらに確証は得られていないレベルではありますが、ダンス病やスス病の原因であるという説も提唱されています。

以上、PCV2が関わる様々な疾病について整理してみました。これらの疾病は他の病原体と共同で現れるケースが多いとされ、特に米国の研究者の間では、これらの疾病の総称として、PCVAD(豚サーコウイルス関連疾病)という呼び方に統一する事を提唱しています。PCV2が関わる疾病も複雑ですが、それらの疾病に関する用語も複雑であり、この拙文で少しでも整理ができれば幸いです。

(文責 検査センター 矢原芳博)

総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514

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