豚サーコウイルス2型って何?
最近、養豚雑誌をにぎわせている豚サーコウイルス2型(PCV2)ですが、本当に日本中で大きな問題になっているのでしょうか。その前に、豚サーコウイルス2型とはどんなウイルスなのでしょうか。どのようにして病気を起すのでしょうか。今回は、豚サーコウイルス2型の基本について再度確認をしてみたいと思います。
1.豚サーコウイルス2型(PCV2)とはどんなウイルス?
PCV2は、ウイルスの中でも非常に小さいウイルスで、DNAを遺伝子に持つウイルスです。この事は、野外で消毒薬に比較的強い事、遺伝子の変異は比較的少ない事を意味しています。サーコウイルスは自然界では多くの動物の体内から見つかっており、豚のサーコウイルスも豚の体内から高率に検出される常在ウイルスです。豚サーコウイルス(PCV)は、1型と2型に分かれており、1型には全く病原性が認められません。ですから現在養豚場で問題となっているPCVはすべて2型です。そのためこのウイルスをPCV2と省略して示しています。実はPCV2も既に世界の多くの国々の豚の間に高率に浸潤している事が分かっています。日本においても農場の抗体陽性率は90%以上であると言われており、PRRSウイルス以上の浸潤度なのです。
2.PCV2はどのようにして病気を起すのでしょうか?
実はPCV2は、PCV1と同様に、健康な豚に単独で感染させても何の病気も起しません。どうもPCV2が豚に病気を起させるためには、さらに何か引き金になるものが必要だと言われています。現在のところ、それが何であるか完全に特定はできていませんが、PRRSウイルスやパルボウイルス、さらにはある種のワクチンに含まれるオイルアジュバントなどの影響が疑われています。PCV2による疾病は、まさに「日和見」的な感染といえます。ですから農場の子豚が高い抗体を保有しているにもかかわらず、健康に育っているケースも珍しくありません。今後の研究で、この「引き金」となるものが何なのか明らかにされる事が望まれています。
反面、現在養豚場で見られる重篤な症状の離乳豚を解剖し、ウイルス分離や遺伝子診断、あるいは病理組織検査を行うと、各種の臓器(特にリンパ系組織)から大量のPCV2が検出され、非常に特徴的な病変が観察されます。リンパ節の中のリンパ球がウイルスに攻撃されて極端に少なくなってしまうために、子豚体内の免疫機能が低下する、いわゆる「免疫抑制」状態におちいってしまいます。このことがPCV2によって起きる疾病の厄介さの大きな理由になっているのです。 さらに次回号では、PCV2によって起きる様々な疾病の形について説明していきたいと思います。
(文責 検査センター 矢原芳博)
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