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夏場は母豚の飲水管理が重要 ~飲水量と泌乳量の関係~

8月に入り、関東~九州は突然梅雨が明けるとともに気温が急激に上昇してきました。農場では夏場対策として、

  1. 石灰の豚舎全体への塗布
  2. 寒冷紗の有効利用
  3. ダクトファンの設置
  4. ドリップクーリング(ペットボトルを凍らせる方法が流行中です)
  5. 補助栄養剤の飼料添加等

を実施している方も多いと思います。しかし、母豚の飲水は最も重要であるにも関わらず、見落されがちの上、流量が確保できずに対策が難しい農場も多いかと思います。

授乳期間中の哺乳豚1頭あたりの必要乳量は、1日で約500mlと言われているので、10頭の子豚を抱えた母豚は1日に約5リットルの泌乳量が必要です。また、母豚が1リットルの乳を産生するのに必要な飲水量は約4リットルと言われているので、5リットルの泌乳に必要な飲水量は20リットルにもなります。これに母豚自身の代謝に必要な水分を考慮すると、母豚が1日に必要な水は30リットル近くになります。

母豚の水分が不足すると、水分不足→脱水→腎臓への血流不足→腎炎・膀胱炎・乳房浮腫・陰門部浮腫等を発症しやすくなります。夏の分娩時に母豚の飲水量が不足すると、陰門部の浮腫などから有害菌の感染が起こりやすく、感染した有害菌の毒素は体内に放出され、循環器系の障害と共に泌乳停止に陥り哺乳の継続は不可能となります。夏場の母豚は常に脱水に陥りやすい環境にあることを理解した上で、管理をすることが大切です。一般的に母豚の飲水流量はストール(妊娠豚舎)では1分間に1.5リットル以上、分娩舎では1分間に2.0リットル以上が必要と言われています。飲水量と流量は強い相関関係があり、流量が少ないと豚は水を飲むことをあきらめてしまいます。水圧の調整やピッカーのつまりのチェック等をして、豚がストレス無く水を飲める環境を与えてあげてください。

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(文責 TS部 東 克士)

総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514

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