屠場サーベイ ~肺病変スコアの有効活用~
こんにちは、入社二年目の平内と申します。先月から検査センタートピックスを一部担当させて頂いています。先日、先輩獣医師が実施している屠場サーベイに同行する機会がありましたので、今回は屠場サーベイについてご紹介したいと思います。
屠場に出荷された豚は、と畜検査で合格すると食肉になりますが、生産者の方々は出荷した豚の内臓病変の状態について、廃棄でもない限りはよく知らないのが実情だと思います。そこで、生産者に代わって屠場に入り、肺病変や鼻甲介の状態、内臓廃棄の原因などを調査するのが屠場サーベイです。今回は、各農場の肺病変の頻度と程度を評価するための肺病変スコアについて説明します。
屠場に入ると食肉検査の邪魔にならない場所に陣取り、調査対象の豚が運ばれるのを待ちます。次々に流れてくる逆さに吊られた屠体から、手際よく切り離されてくる検査を終えた内臓を拝借し、肺を観察し病変をスケッチします。マイコプラズマ(MPS)様病変、典型的な胸膜肺炎(APP)病変である癒着、線維素、硬結感、出血、膿瘍などを肺の模式図に書き込みます。屠場の処理スピードにもよりますが、1頭にかけられる時間はわずか20秒と結構忙しい作業です。
そのスケッチを持ち帰り、当社独自の採点システムに従い、それぞれの肺の病変の程度によって、0:著変なし、1:極軽度、3:軽度、5:中等度、7:重度とスコアをつけます。最終的に農場のMPSとAPPについてそれぞれの総合スコアが計算される仕組みになっています。
各農場のスコアを並べてみると、農場の特性がよく現れてきます。肺病変自体ほとんど見られずスコアが非常に良い農場もあれば、MPSはコントロールできているのにAPPのスコアが悪い農場など様々です。経時的な変化でみても、「いやぁ、最近豚の調子がいいんだよねー。」という農場では、やはり数ヶ月前のスコアと比較すると格段に良くなっていることもあり、それぞれの農場の衛生レベルをよく反映しているなあと感じます。このような屠場サーベイに血清抗体検査などを組み合わせることで、農場の衛生状況を充分に把握でき、ワクチン効果の確認など疾病対策に有効な手段となります。
屠場サーベイの実施に当たっては、屠場への立ち入りが可能であること、屠場サーベイを依頼できる獣医師の存在などが条件となります。しかし、実際に屠場に足を運ばなくても、最近では多くの屠場がと畜時の内臓検査の成績を農場にフィードバックしてくれています。このデータをよく解析し、自農場でどんな疾病が発生しているのかを判断する材料に活用していただきたいと思います。
(文責 検査センター 平内あかね)
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