子豚の神経症状は、原因により治療薬を使い分けましょう。
離乳前後の子豚が豚舎内で足をバタバタしたり、痙攣したりする症状に出くわすケースは、かなり多くの農場で経験されていることと思います。このような症状を総称して「神経症状」と呼んでいます。「神経症状」とは、通常は脳などの神経組織に侵入できないはずの病原体や毒素が、様々な原因で入り込んで起きる症状ですが、具体的には下記のような症状が挙げられます。
- 痙攣(四肢を小刻みに震わせる)
- 強直(四肢や胴体に力が入ったまま伸びきっている状態)
- 遊泳運動(四肢をゆっくりと泳ぐように動かしている状態)
- 眼球(瞳がぐるぐるとまわっている状態)
- 後躯麻痺(下半身が麻痺して、後足が立てない状態)
- 犬座姿勢(犬がお座りするような姿勢で、後足を投げ出している状態)
これらの症状以外にも、無症状(症状を出す前に急死してしまう)、元気消失、食欲消失、ふらついて歩く、ボーッとしてじっと佇んでいる、首が曲がったままになっている(斜頚)といった症状が見られます。
このような症状が見られた場合、そのほとんどのケースでは感染症が疑われます。たとえば、
- (1)レンサ球菌病
- (2)シガ毒素産生大腸菌症(いわゆる浮腫病)
- (3)グレーサー病
- (4)オーエスキー病 等々です。
このうち、(1)~(3)の細菌感染症については、初期症状のうちであれば抗菌性物質による治療の効果が期待できます。しかし使用する抗菌性物質の選択を誤ると、治療したことで子豚が死んでしまうという現象も起きるので注意が必要です。特に(2)のシガ毒素産生大腸菌症の場合、ある種の抗菌性物質には菌体膜を壊すことで菌を殺すものがあり、このような抗菌性物質を使用した場合には菌体の中に蓄積されたシガ毒素が、血中に一度に流れ込んで症状が一気に悪化します。
農場で神経症状を見かけた場合、上記のうちのどの原因で発生しているものなのかを確認した上で、抗生物質の選択に入らなければなりません。浮腫病だからといって必ずしも目の周りの浮腫症状が伴うとは限りませんので、症状だけでこれらの疾病を区別することは困難です。できるだけ早いタイミングで発症豚の検査などを行い、原因をきっちりと確認した上で治療方針を決めていくことをお勧めします。
(文責 検査センター 矢原芳博)
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