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母豚のおりものと再発が気になったら

この夏から冬にかけて、どの農場も繁殖成績が思わしくないという話題を先月しましたが、今月はこの中でも特徴のある繁殖障害について説明します。

農場でストール舎を巡回していると、主に種付け直後から妊娠前半で、母豚が陰部から白いおりものを出しているケースに時々出くわします。白いおりものが出だして数日すると発情の再発が見られたり、場合によってはそのまま血尿をする母豚もあります。発熱や食欲不振を伴ったりする場合もありますが、母豚自体はケロリとしながらおりものだけ出している場合もあります。このような症状が見られる農場は案外と多いもので、なんとなく見逃しているケースもあるようです。

このような症状が見られたらレプトスピラ感染症を疑ってみる必要があります。レプトスピラとは、小型のらせん状の細菌で、種付けの際に雄豚から感染したりします。レプトスピラ症は欧米では非常に感染率の高い疾病として認識されており、ワクチン接種率も高率に実施されているのですが、なぜか日本では注目度が低く、ワクチンすら市販されておりません。しかし本病が日本にまったく無いというわけではないらしく、沖縄を中心にいくつかの発症例が報告されています。

妊娠中の母豚がおりものを出すケースとしては、飲水量の不足による尿結石症もありますが、尿結石症の場合は陰部にカルシウム等の結晶状の塊が見られます。おりものが出た場合には、尿結石症をはじめとして、他の疾病との類症鑑別が必要ですが、レプトスピラ症の血清診断は現在限られた施設でしかできませんし、菌の分離もきわめて難しいので、これらの方法で診断を下すには若干の時間がかかってしまいます。

そこで、手っ取り早い方法として、いわゆる「治療試験」という方法があります。レプトスピラは、テトラサイクリンやストレプトマイシン等に高い感受性を示しますので、上記のようなおりものが見られ、再発が多発しているときには、ストールにいる母豚全体に、OTCまたはCTCあるいはストレプトマイシン(ストレプトマイシンは農場で実際に使用するとすれば、メイリッチPSが一般的でしょう。)を1~2週間程度投与してみます。この処方後、おりものの発生や再発が減ってくれば、レプトスピラ症であった可能性が高いようです。

ここ最近抗菌性物質の農場内での使用は減少傾向にあり、そのこと自体は好ましい傾向ではありますが、レプトスピラ症のような疾病に関しては逆に感染のチャンスが増しているのかもしれません。おりものが気になる場合には、検査センターまでご連絡いただければ、対策についてご相談に応じさせていただきます。

(文責 検査センター 矢原芳博)

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