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豚の常識、牛の非常識

昨年末より検査センターを離れ、これまでの肉牛農場に加えて養豚場へ伺う機会が増えました。改めてそれぞれの農場を比較すると防疫面から見てあまりにも大きな差を感じさせられたことから、今回は啓蒙のためにいくつかの事柄を提言させていただきたいと思います。

養豚場を訪問する場合当たり前のこととして、入場時に場内専用の衣服・長靴に交換します。これはいうまでもなく外部からの病原体の持ち込みを防ぐためです。さらに入浴してから入場する農場も珍しくありません。一方牛の農場では、糞がついたままの作業服や長靴で訪問客が自由に出入りしている例がほとんどです。どちらが衛生面から問題ないかは明らかですね。牛の農場でもせめてお客様用長靴と消毒槽を用意しましょう。

病原体を持ち込む危険性では、やはり外部から導入される豚や牛が最も高いと考えられます。豚の場合、導入前の検査による陰性証明さらに導入豚の隔離措置や馴致期間の設定などは必須項目です。ところが市場から導入されるスモール、素牛については、導入時の衛生プログラムを実施している農場は少数ながら存在しているものの大半の農場ではフリーパスというのが現状ではないでしょうか? 生産農場も母牛の感染状況も異なる雑多な集団が何を持ち込んで来るのか不明な中で、導入時の衛生プログラムを作りましょう。

出荷時の屠場(一部市場もあり)も多くの生産者が集まる場所であり、そこへ運搬した車両も他の生産者由来の病原体で汚染されている可能性があると考えられます。この車両の使用前後の消毒や場内への入場制限なども養豚場では当たり前ですが、牛やさんではどうですか?

ひとたび農場内に病原体が侵入してしまうと根絶することは大変困難であり、また初発の場合など大きな被害を蒙ることがあります。養豚業界ではこれまでの痛い経験を生かして防疫対策を徹底しています。肉牛農家や酪農家においても、大きな被害を出す前に予防策を講じましょう。

牛の非常識が畜産業界の常識に変わるお手伝いをさせていただきます。ご遠慮なく検査センターにお問い合わせください。

(文責 検査センターOB 大久保幸弘)

総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514

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