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豚のワクチンの効果が上がらない場合に

豚の繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の陽性農場では、子豚期に様々なワクチンを接種するものの、その効果がはっきりと現れないケースがよくあります。今回は、このような場合にチェックすべき点をご紹介します。

1.移行抗体と感染抗体の谷間で接種

ワクチンにはその種類ごとに推奨接種プログラムが決められており、これに沿って接種すると最も高い効果が得られるはずですが、農場ごとの状況によって接種時期の調整も必要です。特に子豚に接種するワクチンについては、その疾病の感染、発症時期とワクチン接種のタイミングは非常に重要なポイントです。生後7週齢で抗体陽転する場合、その2週間前頃に感染していると考えられるので、3週齢に接種しておけば効果が得られるでしょう。ちょうどこの時期は移行抗体が消失する時期と重なっており、移行抗体によるワクチン効果の阻害も免れるはずです。しかしPRRSなどの疾病は、移行抗体が切れてから感染までの期間が非常に短く、また移行抗体の消失時期もかなりばらつく事が多いので、豚群全体の移行抗体が切れる時期と、いずれかの子豚の野外感染が始まる時期は重なってしまうケースがほとんどです。このような状態下では、どの日齢でワクチン接種をしても効果を上げる事が出来ないため、子豚への接種は中止したほうがいいでしょう。まず母豚群の抗体価を高く揃え、子豚の移行抗体を安定させ、移行抗体が切れてから野外感染が起きるまでの「空白の期間」を作る事が大前提です。それが出来れば子豚期でのワクチン接種の効果は上がるはずです。

2.接種が疾病を増悪する場合

接種の仕方やタイミングの問題でワクチン本来の効果を発揮できない場合の他に、ワクチンを接種した事で、他の疾病を増悪してしまうケースも報告されています。PRRSウイルスやサーコウイルス2型などが3~4週齢で感染開始している豚群では、この時期に接種したワクチンがこれらのウイルスの症状を増悪するケースがあります。ワクチン接種は1頭1針が基本ですが、現場ではそうでないケースがまだまだ多く、ワクチン注射器を介して人間がウイルスを広めているケースも見受けられます。さらにワクチンの一部の成分がウイルスを活性化させるケースも、まれですが報告されています。この場合とりあえずワクチン接種日齢を前後どちらかに1週間程度移動する事で症状が改善する事があります。

せっかく接種したワクチンが十分な効果を得られるように、上記のようなポイントを常に確認していく必要があります。

(文責 矢原芳博)

総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514

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