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秋口からの呼吸器病対策について(その2)

前回は、秋口からの豚の呼吸器病対策として子豚に当たる風と温度について述べましたが、今回は湿度にまつわる注意事項について述べてみたいと思います。

●日本の冬は乾燥しやすい

日本中の秋口以降の気候で共通して言えるのは湿度の低さです。冬場はもちろんですが、秋晴れのカラッとした気持ちのいい日の湿度も50%を切っていることがしばしばです。では湿度が低いことがなぜ呼吸器病に悪影響を及ぼすのでしょうか。それは喉から気管、気管支にかけての粘膜が乾いてしまうために、本来局所で働くはずの免疫が効果を発揮しなくなるからです。

●豚舎内の適正な湿度は?

舎内温度と違い、湿度については分娩舎から肉豚舎まで共通の目安で構わないと思います。相対湿度で60~80%に保つことが適当だと思います。一般に湿度が50%を切ると、前述したような上部気道の粘膜が乾燥し微生物の感染を受けやすくなります。

さてここで湿度と言っているのは相対湿度のことです。相対湿度とは、「ある温度の時、その空気が含有できる最大の水分を100%として表した空気中の水分量」の事です。つまり空気中の水分は同じ量でも、室温が変化すると湿度も大きく変化するのです。一般に温度が高いほど、空気が含有できる水分量は多くなりますので、同じ空気を暖めると湿度は下がり、冷やすと湿度は上がります。舎内温度は出来るだけ一定に保つ事が理想ですが、オープン豚舎などは、なかなかそうはいきません。一日の温度の動きと同様に湿度の動きも追跡していく必要があります。

●高い湿度も豚には悪い

とにかく湿度を上げればいいかというと、これもまた豚にはマイナスです。湿度90%以上を越えますと、豚体表面が濡れてきて、これに微風でも当たれば豚の体感温度は一気に下がります。湿度過多の離乳舎で朝方に子豚が感じている寒さは、室温以上のものがあることを知っておく必要があります。また豚舎内での水分の発生源として、ガスブルーダーや豚そのものも馬鹿に出来ません。肉豚舎に朝一番に入っていくと、豚房の中で肉豚がかたまって寝ていて、そこから湯気が立ち上っている事がよく有ります。蜜飼いの豚舎では、豚が排出した水分で豚が濡れて冷えて、肺炎を起こす事もしばしばです。

さらに、壁がカーテンで、天井がなく、屋根に断熱材の張っていない豚舎では、秋~冬に豚舎を締め切ると、とたんに結露するケースがよく有ります。湿度過多の原因として、この結露は非常に問題です。豚によくない事も有りますが、設備の耐久年数が一気に短くなってしまいます。天井を張るか、屋根の内側に断熱材を吹き付けるなどの対策は、想像以上に湿度対策に大きな効果をもたらします。  以上、2回にわたって秋口の呼吸器病対策としての舎内環境について述べてみました。どれも基本的なことですが、この機会に再度チェックをお願いします。 

(文責 矢原芳博)

総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514

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