あなたの寄生虫対策は万全?
これまでもこのトピックスで内部寄生虫駆除による肉牛育成成績や肥育成績改善の事例を紹介して参りました。農家さんでも導入時などに牛の背中にポアオン製剤をかける光景をよく目にするようになりました。
そんな中で、ポアオン製剤を使用していたにもかかわらず不幸にして乳頭糞線虫の寄生によると推定されたホルスタイン子牛の連続突然死をたまたま目の当たりにする機会を得ましたのでご紹介いたします。
酪農家から導入されたホルスタン哺育牛の育成農場では、肺炎対策として導入後1ヶ月以内とその3ヶ月後に生ワクチンを接種し、さらに外部・内部寄生虫対策として導入1ヶ月以内にポアオン製剤を使用しており、素牛として販売するまでほとんど事故の発生のないことが自慢でした。ところが、ある日突然生後3ヶ月齢前後の子牛4頭が立て続けに何の前触れもなく、突然斃死するという大問題が発生しました。何しろ無事故が売り物であっただけに農場としては大変困惑し、検査センターへ相談が持ち込まれました。
突然死の原因として代表的なものには、ヘモフィルス・ソムナス感染症、クロストリジウム感染症、乳頭糞線虫感染症などや何らかの物質による中毒などが挙げられますが、現地で確認したところ突然死はある牛房に限定しており、下痢や食欲不振などの症状もまったく認められないことが判明しました。ちょうど現地で確認中にも目の前で、普通にエサを食べていた子牛が突然倒れ5分もしないうちに死んでしまうというショッキングな光景も見ることができました。斃死直後の牛や同居牛の血液・糞便検査の結果、細菌感染症の抗体はすべて低く、乳頭糞線虫卵が全例の糞便から検出されました。
糞便1gあたり、この程度の虫卵数でも問題が起こる可能性が示唆されました。
現地では直ちに2回目のポアオン製剤の塗布を実施したところ、その後の事故はなくなり、糞便中の虫卵数もほとんど検出されなくなりました。さまざまな場所から導入されてくる牛に対しては、ポアオン製剤は1回だけでなく、生活環を考慮して3ヶ月程度経過したところでのもう1回がポイントと言えます。さらに日頃からの健康診断による感染状況の確認も重要ですね。
(文責 大久保幸弘)
総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514