ワクチンは打っているのに‥‥
せっかく疾病予防のためにワクチンを接種しているにも拘わらず、その効果を確認出来ないとのお話を伺うことが時々あります。どうしてこのような事が起きてしまうのでしょうか? ちゃんと用量・用法もきちんと守ったのに効果がない場合には移行抗体の影響により生ワクチン中のウイルスが不活化されてしまっている場合(いわゆるワクチンブレイク)が無視できません。
下表はワクチン接種時の移行抗体レベルによる、抗体上昇を示した個体の割合を表しています。
抗体価が10倍未満の個体では、ほとんどの場合ワクチン接種に伴いその後抗体価の上昇が認められているのに対し、接種時抗体価が160倍以上の個体ではワクチンブレイクにより、その後の抗体上昇はまったく認められておりません。まさしくワクチン接種が無駄になっている例です。
これと似たような事例を各地の和牛市場からの導入和牛で見受けます。上場前に3種あるいは5種混合生ワクチンを1回ないし2回接種済という記載があり、購入する肥育農家にすれば「肺炎対策済ならば導入後の問題も少ないはず」と思い込んで購入。ところが導入後半月程度経過すると、どうも肺炎が発生してしまい、ワクチンは効果がないのでは? と疑問を抱いてしまいます。せっかくの接種にも拘わらず、この場合は自然感染抗体の影響によりワクチンブレイクが起き、その後の充分な抗体産生がなされていないために導入後感染・発症したものと推定されます。私どもの調査でも予想以上に接種済牛での抗体価のバラツキが大きいことを確認しております。
下表は上場前に1ないし2回肺炎生ワクチン接種済牛の導入直後のIBR抗体価です。
接種済にも拘わらず、こんなにも無防備状態なのかと驚くような結果です。それだけに謳い文句に惑わされることなく、必要に応じて導入後の追加接種を行うなどの対策は有効です。これにより大幅な事故率の低下を実現した大手牧場もあります。いろいろご相談くださいませ。
(文責 大久保幸弘)
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