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ワクチンについての基礎知識(その3)

前回までご説明した免疫の仕組みを利用し、病原体が体内に侵入しても即座に反応できるよう用意するのがワクチンです。今回はワクチンの種別についてご説明します。

●不活化ワクチンと生ワクチン

あらかじめ感染したことのない病原体に対して免疫を作っておくためにワクチンを接種するのですが、そのワクチンが病気を引き起こしては本末転倒です。ワクチンの最も基本的な条件はそのワクチンが病原性をもっていない事です。このためワクチンを作る上での最初の作業は病原体の病原性をなくすことになります。 病原体を無毒化する方法として最も簡単な方法が「不活化」です。つまり病原体を殺して、増殖できない状態にしてしまうことです。殺してしまえば体内に接種しても増えられないので病気を起こすことはできません。こうして病原体の蛋白質を体内に入れてやることで、「この蛋白質は外敵ですよ。今度これと同じものが体内に入ってきたらすぐに攻撃するのですよ。」と免疫系に教え込みます。これが「不活化ワクチン」です。

一方、病原体自体を突然変異や遺伝子操作などを利用して、体内で増殖しても病気を起こさないようなタイプに作り変えるのが「弱毒化」です。「弱毒化」した株を使って作るのが「生ワクチン」です。

「不活化ワクチン」と「生ワクチン」にはそれぞれ特徴があり、長所と欠点があります。それを簡単にまとめたものが下の表です。不活化ワクチンは、ホルマリンなどで比較的簡単に病原体を不活化できるので作るのは簡単ですが、生ワクチンと比較して免疫力が弱いため、不活化前に大量に病原体を増やし、数回接種しなければなりません。逆に生ワクチンは、弱毒株を作成するのに時間と手間がかかりますが、接種後の効果は一般に不活化ワクチンより強く、長く続くといわれています。

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(文責 矢原芳博)

総合研究所 検査グループ TEL 0287-37-4501 FAX 0287-37-4514

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