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PED、分娩舎以外で分娩場所を・・・

日清丸紅飼料(株) 総合研究所 検査グループ 矢原芳博


遂に今年も12月がやってきてしまいました。ここ数年、本コーナーでは12月が来るたびに月日の経つのが早いことを嘆いてきましたが、やはり予想通り、今年もより一層のスピードで一年が過ぎてしまいそうです。本当に何もしていない、できていないという実感です。自分の進歩の無さと比較すると、例えば、昨今の母豚の繁殖成績の向上スピードには目を見張るものがあり、もうブロイラー並みの育種改良速度に達しているのではないかと思われます。

今年も多くの皆様に農場内を見せていただき、ああでもない、こうでもないと意見を交わさせてもらい、うまくいったこと(ほんの少し)、見事に失敗したこと(沢山)、様々あります。特に残念なのは、PEDに対して、未だに、「これぞ決定版!」という対策が編み出せていないことです。新規発生農場数については、ご存知のとおり大きく減少しているようですが、常在化してしまっている農場もけっして少ないわけではなく、このような農場に対して、農場内のウイルスのキャッチボールを断ち切る強力な武器が見つかりません。もちろん、母豚への強制的な感染(いわゆる馴致)や、発症哺乳豚の早期淘汰、人工流産等、ウイルス感染を遮断するのが常道なのでしょうが、これらの思い切った対策を打ったあとで、再度発症を繰り返すと、農場の方々のモチベーションが大きく下がってしまい、次の再発の時にはなかなか思い切ったことができなくなるのが現状です。つまりは今年の初め頃に悩んでいたこととほぼ同じことを、年末の今感じているわけです。

ただ、おびただしい失敗を繰り返しながらも、分娩舎の空舎、あるいは既存の分娩舎以外の場所での分娩によって、かなりの確率で発症を断ち切れることは見えてきました。当たり前のことですが、大量にウイルスを撒き散らす哺乳豚とこれから分娩する母豚(特に初産豚)を物理的、あるいは時間的に引き離すことで、その時の感染を断ち切れそうです。「分娩舎を空にする(分娩舎のパーシャルデポピュレーション)」、あるいは「分娩舎以外に分娩できる場所を確保する。」ということに焦点を絞ってPED対策を進めると、モチベーションを維持しながら病気と立ち向かえそうです。「来年こそは○○するぞ!」、と毎年末に思うことですが、○○に入ることが一つでも少なくなるように、「来年こそは」がんばりたいと思います。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2016年12月号掲載

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