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アフリカ豚コレラ、ロシアを東進!

日清丸紅飼料(株) 総合研究所 検査グループ 矢原芳博


猛暑と豪雨があちこちで頻発する夏ですが、
豚の状態はいかがでしょうか。

さて、今年に入ってから特に、
アフリカ豚コレラの状況が気になっております。
アフリカ豚コレラは、アスファウイルス属という、
通常の豚コレラ(ペスチウイルス属)とは別の属のウイルスによって
起きる疾病ですが、症状は豚コレラとよく似ており、
発熱や全身の出血性病変を特徴とする致死率の高い伝染病です。

豚やイノシシが宿主となりますが、感染力が強く、
ひとたび養豚場で感染が起きると、甚大な被害が想定されるため、
世界中で恐れられている疾病の一つです。
その名の通り元々はアフリカの南部地域などに
限局されていた疾病ですが、1950年代からヨーロッパ、
中南米での発生報告が聞かれるようになり、さらに2007年以降、
東欧各国で汚染厨芥を介した感染拡大によって
大きな被害をもたらしています。

私自身も、学生時代には確かに、伝染病学で習ったような、
微かな記憶がありますが、養豚業界に携わってからは、
遠い世界で起きている日本には縁のない
病気の一つくらいに考えておりました。

しかし、2007年以降の東欧での流行は、じわじわと西に向かって広がって
ポーランド、チェコへと広がりを見せているのと同時に、
東のロシアへと広がっていくに至り、農水省では2013626日付けで、
「アフリカ豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」を発表し、
日本にアフリカ豚コレラウイルスが侵入する可能性があるという前提で
防疫体制を構築する必要があるとしています。
本病については現在のところ有効なワクチンはなく、ひとたび国内への
侵入を許せば、摘発淘汰(スタンピングアウト)による
清浄化を進めるしかありません。

さらに、今年に入って、ロシア国内でも西側に限局していた発生が、
3月にイルクーツク州、7月にはオムスク州と一気に
東側に飛んでの発生が報告されています。
この病気は、野生のイノシシが感染拡大に大きな役割を
果たしております。
イノシシにとって国境は関係がないので、このまま南隣の
モンゴルを経由して中国に広がらないだろうかと心配しています。

このような、いわゆる「越境性動物疾病」の場合、イノシシを介して
じわじわと感染拡大を起こす拡大経路と同時に、
今回のイルクーツク州やオムスク州のケースのように、
一気に数千kmを飛んで発生する経路があり、特に後者については、
その原因が何なのか、今後も情報を注目していく必要があります。

現時点では、まずアフリカ豚コレラという病気を知っておく事、
海外の情報をフォローしていくことが重要と思い、
このコーナーの話題とさせていただきました。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2017年8月号掲載

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