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中国養豚の及ぼす影響

日清丸紅飼料(株) 総合研究所 検査グループ 矢原芳博


先日、世界の豚肉の生産と飼養母豚数の傾向を調べようと、
ピッグインターナショナル誌2016年11、12月号を読んでいたら、
中国の母豚飼養頭数が2013年をピークに大きく減少している事実を知りました。

中国は世界最大の豚肉生産国で、世界中の豚の約半分が
中国で飼育されているのは皆さんよくご存知のことと思います。
その母豚飼養頭数は、2013年に51,323千頭で、
同年の日本の飼養母豚数900千頭と比較して、なんと57倍でした。

その中国の母豚数が2014年には45,750千頭、
さらに2015年には37,989千頭にまで急激に減少しているとのことです。
この2年間に13,334千頭もの母豚が減少していることになります。
この頭数は、日本の飼養母豚数の約15倍にあたります。

この中国の状況については、本誌の今年1月号の連載
「グローバル時代の豚肉産業(高橋寛先生)」にも詳しく解説されておりますので、
ご参照いただければと思います。

中国国内の状況については、高橋先生の解析で非常に良く理解できましたが、
やはりその変化の規模の大きさに改めて驚いてしまいます。
この母豚数の減少と言う変化は、世界の豚肉の生産、
流通にも大きな影響が出ることは、容易に想像できます。

まずは直接的に、中国の豚肉の輸入が今後さらに増えるだろうと言うことです。
もうすでに中国は、日本を抜いて、世界最大の豚肉輸入国になっている訳ですが、
中国の豚肉消費量は、この飼養頭数の減少とは無関係に順調に
伸びていると言うことですから、どう考えても今後さらに中国の豚肉輸入量は
増え続けるはずです。
しかも日本の養豚産業の何倍と言う規模で...。

世界中の養豚生産国が、これに対応するでしょうが、当然豚肉の国際価格は
今後も上昇し続けると考えるのが自然でしょう。
日本の豚肉の輸入価格も上昇するはずですので、国内生産豚肉の
価格に対しても上昇への要因となるはずです。

豚価が上昇することは生産者にとっては喜ばしいことですが、
私が気になっているのは、日本の国内規模の何倍、何十倍と言う規模の出来事が、
一つの国の中で起きているという事で、場合によっては、この逆の事柄も、
中国の国内状況の変化で起こりうるということです。

病気の問題も世界規模で情報収集する必要性が高まっていますが、
生産動向についても同様に世界の動向を
常に気にしなければならない時代になっています。
養豚業も他の産業と同様にインターナショナルな
業界であると再認識しています。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2017年7月号掲載

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