空気の質はスノコの上も下も!
日清丸紅飼料(株) 総合研究所 検査グループ 矢原芳博
今年も残すところ、あと1ヵ月半になってしまいました。すでに早めの雪の影響を受けておられる地域もあると思われますが、豚舎の冬場の備えは進んでいるでしょうか。農場を訪問させていただいて、冬場の豚舎内環境で、今一番気になるのが換気ムラとピット下の状態の2点です。
外気温が下がってくれば、当然舎内の換気量も減っていき、最終的には最低換気量を維持する状態になるわけですが、豚舎、あるいは部屋毎に最低換気量を維持できていれば、豚にとって充分な環境が得られるかといえば、そうとも言い切れません。様々な農場をお邪魔している中で感じるのは、その豚舎、あるいは部屋(つまり同じ空気を共有している単位)にいる豚達が、みんな同じ質の空気を吸えている農場は意外と少ないということです。舎内の換気量が減ることにより、空気の撹拌効果が減ってしまい、いわゆる「換気ムラ」ができている豚舎が少なくありません。豚舎内で、いつも床の濡れている豚房はありませんか?そしてその豚房の豚はいつも発育が遅れませんか?そこの豚房は局所的に換気不良が起きている可能性があります。
このような状態を改善するためには、舎内でファンを回して空気をかき混ぜることです。豚舎の中と外の空気を入れ替えるためではなく、舎内の空気を撹拌して、部屋全体の空気の状態を均一にしてやることです。現在では舎内の空気を撹拌するためのファンは色々と販売されていますので、豚舎のサイズや構造にあったファンを選ぶことができます。冬場の子豚の呼吸器病による事故が、サーキュレーターの設置で劇的に改善したというケースを我々も経験しています。
また、「空気の撹拌」の際に、念頭に入れておくべきなのが、豚舎のスノコの下の状態です。誤解を恐れずに、一言で言ってしまえば、豚が居る床の高さとピット下の糞尿までの距離が短い豚舎ほど、成績は悪くなります。糞尿混合のピットであれば水面がスノコの面ぎりぎりの豚舎、スクレッパー式の豚舎では、糞除去の頻度が少ない豚舎では、発育速度や事故率に問題を抱えているケースが多い傾向にあります。
ここ数年PEDに悩まされ続ける中でも感じてきたことですが、この原則は下痢、呼吸器病に限らず、言えることではないかと思われます。舎内換気を考える上で、床から上の空気を均一にする事が重要と思っていましたが、更に一歩進んで、床下の空気も綺麗にしておく必要がありそうです。
「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2016年11月号掲載