第三者認証の目的は何?
日清丸紅飼料(株) 総合研究所 検査グループ 矢原芳博
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて今年は、養豚界にとってどのような年になるのでしょうか。私自身、豚の疾病診断に関わる業務をしているため、どうしても病気の視点から業界を見てしまいがちですが、ここは一つ視点を変えて、第三者認証について考えてみたいと思います。
2020年の東京オリンピックに向けて、その食材の調達には、農場が安全なお肉を生産しているという事を、第三者が認定したものでなくてはならない、という縛りが掛かりそうだ、という話がにわかに騒がれ出しています。世界の人々が一堂に会する場では、その食材の調達もまた、世界的なルールに則って行われるべきだ、と言う原則は誰も否定できないと思われます。
この動きを受けて、農場HACCPであるとかJGAPなどの承認を受けようと動き出している農場も多いことと思います。養豚場が安全な豚肉を生産するための努力をすることは、いわば当たり前の責務であり、粛々と進めていくべき事だと思います。国内の全ての養豚場がオリンピックの公式な食材になるわけではないでしょうから、HACCPやJGAPを取得しようとしている農場のほとんどは本当にオリンピックの公式食材として採用されることが目的で、認証取得を考えているわけではないと思われます。
それでは、なぜそんな面倒な手順をかけてまで認証取得を目指すのでしょうか。それは今後、豚肉生産においても世界ルールに準じていないものは、市場から排除されていく可能性があるからだと考えられ出したためではないでしょうか。昨年は日本国内の大手のメーカーが、検査で不正を働いたり、スペックを偽ったりという不祥事が多発しました。
昨日までは、なあなあで許されていた(と思い込んでいた)事柄が、今日突如告発される、という出来事が散発している世の中です。加えて世の中のルールも刻々と変化している情勢です。このような「ルール」を守っているかどうかについて、養豚場自身が主張しても、その通り信じてもらえるかどうかわかりません。そこで第三者認証機関に、一定の要求事項に沿って、その農場が「ルール」を守っているかどうか、客観的な証拠を基に判断してもらう方法を取るのです。
一見、ハードルの高い作業にも思われますが、取得に向けてかなり細かなステップが用意されており、これを一緒に進めてくれるコンサルタントも増えていると聞いています。自農場を客観的な観点で見つめなおす事は、農場の生産性を向上させる上でも有効なはずです。今年のテーマとしてご検討されてはどうでしょうか。
「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2018年1月号掲載