換気・温度調整の迷い
日清丸紅飼料(株) 総合研究所 検査グループ 矢原芳博
北国では、初霜や山間部の積雪などの便りの届く季節となりました。東日本では今年8月の日照時間の少なさから気温の上がらない、豚にとっては快適な夏となったはずですが、本格的な秋を迎えるにあたり、流産、死産等の繁殖障害が増えてきたという声を聞きます。また、離乳舎から肥育舎にかけては、呼吸器病の多発し始める時期でもありますが、レンサ球菌症や浮腫病なども、散発しているようです。母豚でも子豚でも、日ごとの気温の較差が大きく、舎内環境の調整に迷いは生じていないでしょうか。
例えばウインドレス豚舎であれば、舎内の換気は、温度と稼動するファンの数と回転数を組合せた設定を事前にしておいて、さらに舎内の豚の反応を見ながら、微調整を行うのが一般的と思います。開放豚舎に置いては、やはりカーテンの開け閉めやファンの運転を、室温と豚の状態を見ながら行っていると思います。
ただ、日ごとに気温の上下が激しいと、ファンの運転方法を変えた瞬間の豚の反応にだまされてしまう事も、ままあるようです。例えば肥育豚舎でカーテンを一気に開けると、豚が一斉に咳をし始めたり、ぐったりと寝ていたものが一斉に立ち上がって、再びくっ付きあって寝たり、と言うように環境の変化に対する行動に目を奪われてしまい、ついつい、カーテンを締め切って換気不足になっているケースを見かけます。
この傾向は、豚をよく観察し、可愛がっている管理者に見られがちです。これらの変化の、さらに先の反応を確認してみると、意外に咳は一過性で、その後立ち上がってえさを良く食べるようになったとか、一時的に寄り集まったが、そのうち三々五々、動き出したとか、本来のその環境に対する反応が見えてきます。豚達にだまされず、本当の声を聞くことが重要です。
逆にこれらの環境変化に対する反応を逆手にとって、真冬の昼間に、いきなりカーテンを全開にしたり、ファンをフル回転させて、寝ていた豚を起こして、飼料を食いに行かせるなどと言った工夫をされている方もいらっしゃいます。管理に迷ったら、もう20~30分後の豚の状態を確認する事をお勧めいたします。
「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2017年10月号掲載