APP新たな検査法への期待
日清丸紅飼料(株) 総合研究所 検査グループ 矢原芳博
朝晩の冷え込みが日ごとに厳しくなりつつありますが、農場内では肺炎は発症していないでしょうか。我々は農場内での肺炎をはじめ下痢や異常産などの疾病の状況を定期的に採材し、モニタリングする業務を長年取り組んでおりますが、その中でも実際に抗体価を測定したり、遺伝子を検出したりする検査法は、その都度どんどん進歩してきております。抗体検査法で言えば、かつては凝集検査系が多かったのですが、これが酵素抗体法(ELISA)に置き換わりつつあります。
具体的には、豚胸膜肺炎(APP)の抗体検査は、我々のラボでは、ラテックス凝集反応(LA)と補体結合反応(CF)を組み合わせて実施してきました。しかし、この秋APPのLAのキットが発売中止となり、我々のラボもLAからELISAに切り替えることにしました。最近国内で市販されたELISAキットは、ApxⅣという胸膜肺炎菌の持つ毒素を抗原としています。
このApxⅣに対する抗体は、APPの野外感染を受けたときのみ産生され、ワクチン接種では抗体は上昇しません。この特徴を生かして、ApxⅣ ELISAでば野外感染抗体のみを検出するユニークな検査法となっています。
今までのAPPの抗体検査では、①野外感染の上昇がいつ頃、どの程度起きているか、②接種したワクチンがうまくテイクして抗体が上がっているか、③上昇したワクチン抗体が持続して、出荷まで防御できているか、について一つの検査法の結果の中で同時に判断していましたが、どうも様々なファクターが絡み合って、上記の3つのポイントがクリアに見えない事も、ままありました。
一方、ApxⅣ ELISAでは、ワクチン抗体の関与は全くなくなるわけで、①抗体価の推移に現れるのは、野外感染がいつ頃、どの程度起きているのか、②加えて母豚の野外感染抗体由来の移行抗体が子豚でどの程度持続するのかに絞られます。ワクチンの効果は、子豚の野外感染がどの程度抑えられているかを持って、判断していきます。
ApxⅣ ELISAの検査事例を積み重ねている最中ではありますが、子豚期のAPP発症のタイミングと抗体上昇のタイミングはかなり一致して見られますので、野外の農場におけるAPPのモニタリングには有用なツールになると考えています。
これらのツールをうまく活用しながら、様々なAPP対策を打ちながら、その効果を検証していきたいと考えています。
「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2017年11月号掲載