危機管理度と5S達成度は相関!?
日清丸紅飼料(株) 総合研究所 検査グループ 矢原芳博
相次ぐ台風の到来で、各地で被害を受けた皆様には、心からお見舞いを申し上げます。今回の台風やそれに関連した大雨、暴風雨では、もちろん冠水被害も問題ですが、地域的な停電や農場単位での漏電等の原因による停電が被害の発端になったケースをお聞きしています。養豚場の設備は、もはや電気なしには立ち行かないシステムになっており、特にウインドレス豚舎の場合には顕著です。「豚肉の原材料の一部は電気である。」と言っても過言ではないかもしれません。
換気システムが止まると、一晩で(あるいは数時間で、)数百頭単位の豚が窒息死するほど密閉度の高い豚舎には、必ずリスク回避のための対策が用意されています。通電時には空気圧で膨らんだ風船で塞がれている穴が、停電時には、風船がしぼんで換気口になるタイプ、電磁石で閉じられている扉が、停電時に外れて換気口が開くタイプもあります。また停電時には、あらかじめ登録していた電話番号にアラームが届くというシステムもあります。しかし問題は、いざという時にこれらの仕組みが正常に作動するか、ということに尽きると思います。平時には一定の間隔で、これらの危機回避システムが正常に作動するかの試験を必ず行っておくことをお勧めします。
また最近は、農場内での5Sに対する関心も高まっています。農場内の整理、整頓のレベルと農場生産成績の相関が非常に高いものであると、つくづく感じています。豚舎内の通路の綺麗さを見れば、その農場の成績がほぼほぼ想像できるような気がします(設備の新しい、古いは関係ありません。念のため)。仮に「綺麗な農場」で成績が悪い場合があっても、多くの場合、その原因は単純で、原因が取り除かれれば、すぐに成績が回復します。
ウインドレス豚舎の緊急換気口のあたりに、うっそうとクモの巣が張っていたり、埃が積み重なっていたり、用途不明な資材が立て掛けてあったりするのを見ると、「いざという時に、この豚舎の緊急対策はまともに働くのだろうか」と心配になってしまいます。整理、整頓、清掃、清潔そして躾け、の5Sの達成度は、農場生産成績だけでなく、災害への守りの能力にも大きく相関しているのではないでしょうか。
「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2016年09月号掲載