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オールアウトで基本の水洗・消毒・乾燥

日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博

今年も6月に入り、気がついたら一年の半分が終わろうとしています。まだ何もしていないのに...と気ばかりあせっている今日この頃ですが、皆様はいかがでしょうか。今年の4月から6月にかけての気候の変動は激しく、5月に入って真夏日が頻繁にやってきたかと思えば、6月には北海道で雪が降る等、豚舎内の環境調整には苦労されていると思います。胸膜肺炎などの呼吸器病やレンサ球菌症、スス病、浮腫病などの突発的な発生のご相談も多かったこの春です。このような疾病の発生には2パターンあり、ひとつは季節によって上記の症状が発生するものの、対策を打てば単発で終わるケース、もうひとつは何かのきっかけで症状が出始めると、対策を打ってもなかなか終息せず、数ヶ月(あるいはそれ以上)引きずるケースです。簡単に割り切って考えれば、各群毎の病原体の隔離がどの程度できているかによって、この違いが生まれてくると言えるでしょう。過去には、日本ではなかなか難しいと言われていたオールインオールアウトも、最近では離乳舎、子豚舎までは実現できている農場も増えてきています。棟ごとのオールインオールアウトが理想ではありますが、無理なら部屋ごとでも効果は得られます。部屋を区切るのが無理なら、たとえば週毎のグループとグループの間の豚房をひとつ空にして直接接触を防ぐだけでもそれなりの効果は得られます。加えてオールアウト後の水洗、消毒の質も、各群毎の疾病の隔離度合いに大きな影響を及ぼします。まずは水洗、されど水洗です。消毒前にいかに病原体の巣となる有機物、埃を洗い流しておくか、地味ですがこれが鍵です。そしてそれに次ぐ乾燥、消毒、そして乾燥。一個一個の工程がいかに確実に行われているか、病原体にはその違いがはっきりと分かるようです。

今更こんな話題を取り上げても新鮮味は無いかもしれません。しかし私自身も、お付き合いの長い養豚場さんほど、アウト後の水洗や消毒の細かい工程のチェックを改めてやらずに、「えっ!そんな事してたの?」と驚くことが少なくありません。基本のチェックの繰り返しが大事であると、今更、今更、思い知らされます。自分の反省を皆様にもお伝えし、これを他山の石としていただければありがたいと思います。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2016年06月号掲載

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