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驚くべきPCR検査の精度アップ

日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博

この度の熊本地震では、多くの人命とともに、畜産農場にも大きな被害があったとお聞きしております。お亡くなりになった方々へお悔やみを申し上げるとともに、被害を受けられた畜産農場の皆様にも心よりお見舞いを申し上げます。

さて、大型連休も終わり(畜産関係者にはあまり関係の無いことかも知れませんが...)、この時期を境に、夏日、真夏日という言葉がテレビでも聞こえ出します。養豚場の管理も、寒さ対策から暑さ対策に頭の切り替えが必要な時期になってきました。2年半苦しめられてきたPEDですが、何とかこの夏場に、とどめを刺してやりたいものです。先日ある農場で、数ヶ月PED症状が見られなくなったことから、清浄化できたかどうかを確認するために、場内の色々な場所のふき取りを行い、これをPCR検査にかけてみました。その結果を見て驚いたのですが、肥育舎のピット下、堆肥舎の前の道路から、わずかながらPEDウイルス遺伝子が検出されました。もう数ヶ月間発症の見られない養豚場でも、まだ農場にウイルス遺伝子が存在するということを改めて経験し、この病気の恐ろしさ、手ごわさを再認識させられました。ウイルス遺伝子が見つかったという事イコール感染性のあるウイルスがそこに居るということではないのですが、農場のスタッフの皆さんには、もう一度ふんどしを締めなおしてがんばろう、と励ましました。お蔭様で、その後もPED症状は見られていません。夏場の間の気温の助けを借りて、真の清浄化に取り組み中です。

PEDに限らず、遺伝子検査の進歩のおかげで、数年前までは分からなかった病原体の存在が少しずつ見えるようになってきました。病気を起こしていない時に病原体がどこに潜んでいるのか、豚の身体の中なのか、豚舎の片隅の埃の中なのか、糞尿の中なのか...、最新の遺伝子検査のずば抜けた感度を駆使することで、少しずつ見えて来そうな予感がしています。科学の進歩の恩恵を生産現場に生かすべく、最新兵器の使い方を勉強しています。

「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2016年05月号掲載

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