PED、3シーズン目の要注意!
日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博
暖冬だと思って油断していたら、急激な寒さが襲ってきました。これに前後して、茨城、群馬、埼玉など北関東でPEDの発生が相次いで報告されています。その中には初発農場も多く、気の抜けない状況が継続しています。これまでPED陰性を守ってきた農場の皆さんですから、発生してしまった落胆は大きいわけですが、自分の関係している農場には、できるだけ早く駆けつけるか電話で話をしながら、できる限りの初期対応を行い、被害をできるだけ小さくしましょうと励まします。冬場は気温が低いので環境中に排出されたPEDウイルスの生存時間が長くなるので、感染のリスクが高まります、というのは、もう皆さん耳にタコができるぐらい聞いておられるとおもいます。しかしそれにしてもこれだけ初発農場が相次いで報告されるということは、予想以上に環境中にウイルスが排出されていて、しかもそれが至る所を汚染していると考えるべきかもしれません。米国でPEDが発生し始めた頃に、アイオア州のコンビニエンスストアの床をふき取り検査したところ、すべてPED-PCR陽性であったという報告がありました。広大なアイオア州を肉豚出荷トラックが走っていて、途中休憩に立ち寄るコンビニの床が高率に汚染されているという事実に恐怖を覚えましたが、同じことが日本で起きないといえるでしょうか。たとえばPEDの症状がある程度治まった農場内で作業していた人が、用事を足しに、ちょっと中抜けしてコンビニに行ったとします。上着は着替えたけど、急いでいたので農場内用のスリッパをそのまま履いていってしまったら...。冬場ということもあり、PEDウイルスは、症状が収まった後も農場内に生き残っている可能性があります。不必要に不安を煽るのはよくない事と思いますが、農場外の環境にもPEDウイルスが存在する可能性があると想像することで、より強力なバイオセキュリティを実行できるのではないでしょうか。ましてや、と畜場との往復は言わずもがなです。防疫対策について、まだまだ緩めるときではありません。PED流行3シーズン目の冬、いかに流行拡大を食い止めるか、4シーズン目を迎えないための試金石になると思います。
「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2016年02月号掲載