TPP対策に感謝し生産性改善に!
日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博
今年もとうとう12月に突入してしまいました。毎年感じる事ですが、月日の流れる速さは、歳を取るごとに加速度を増していきます。ほんのさっき1月だったのに...
PEDに関しては、今年も冬季に入り、再発を含めた発生が数件報告されており、引き続き油断できない状態です。特に一度浸潤を受けた農場では、農場内のどこかに潜んでいるウイルスが、症状が治まった後、数か月後に再び子豚に感染して再発症を起こすリスクもまだまだ残されていると思っておく必要があります。ただ新規発症は相当少なく抑えられており、農場の皆さんのバイオセキュリティレベルはある程度のレベルで維持されているものと思います。年末年始は休日シフトが特別なパターンになる場合も多くなると思います。また、夏場以降増加傾向にあるレンサ球菌症についても、まだ続発している農場も散見されます。油断することなく、消毒や隔離の申し送りを充分にお願いします。
とはいうものの、全体的には落ち着きを取り戻しつつある養豚現場では、繁殖成績(特に産子数)の向上が進むなか、在庫頭数が徐々に増えつつある農場が多いのではないでしょうか。それを受けて低下傾向に転じていた豚価も、年末モードに入って少し持ち直しており、このままいけばここ数年のうちでは落ち着いた年の暮れではないかと感じています。
ただ、世界に目を転じればTPPの合意達成を受け、今後国内の養豚生産はどうなるのだろうという不安は付き纏います。そんな中、11月25日に農水省TPP対策本部が発表した「農林水産分野におけるTPP対策(案)」を読むと、現行の養豚経営安定対策事業を、牛のマルキン並に拡充して法制化するという方針が明記されていました。ここまで思い切った対策案が出てくるとは予想していなかったので、びっくりすると共に、牛並の対策案を引き出すために、養豚業界の方々が相当な粘り強い働きかけ、交渉を行ってきたものと思われ、敬意の念を込め、感謝したいと思います。この対策の法制化が無事、この内容のまま可決、施行される事を祈っております。
そして本当に望ましい事は、この対策が発動されることなく、日本の養豚産業が世界の養豚と互角に渡り合ってコスト競争できる生産性を手に入れる事だと思います。高いハードルはたくさんあるかもれませんが、既に国内のトップランナーは、世界レベルの生産性を実現しています。我々も自分の持ち場である家畜衛生の分野で、世界と戦えるレベルを目指して、来年も頑張って行こうと思います。
「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2015年12月号掲載