レンサ球菌症に注意!
日清丸紅飼料(株)総合研究所 検査グループ 矢原芳博
お盆明けから猛暑が嘘のように静まり、一気に秋の気候に移り変わっております。豚にとってはありがたい気候で、このまま暑さのぶり返しが無い事を祈るばかりです。暑さもPEDもぶり返しは無い方がいい!母豚も肥育豚も食欲が戻って、受胎率や出荷のスピードが向上してくれることを期待しています。
7月末から8月の暑さのピークの時に、お客様の農場からお問い合わせが多かったのが、離乳豚の神経症状についてです。離乳舎で子豚が遊泳運動を起こしたり急死したりするので、原因を調べてほしいというご依頼です。このコーナーでも何回か取り上げさせてもらいましたが、離乳舎で神経症状を呈した子豚を見つけた場合、レンサ球菌症か浮腫病かを類症鑑別しておかないと危険です。通常、レンサ球菌主対策としてはペニシリン系の抗生物質を使用しますが、もしこれが浮腫病だった場合には腸内の志賀毒素産生大腸菌から志賀毒素が大量に体内に取り込まれて逆に急死してしまう場合もあります。この話を頭の片隅に記憶しておいていただいたお客様から、「どっちか調べてくれ。」とサンプルが送られてきます。今年のケースではレンサ球菌が分離されるケースが多かったようですが、決め打ちは非常に危険なので検査をお勧めします。とはいえ検査結果が出るまで、目の前に震えている子豚が居るのに、手を拱いて見ている訳にはいかないので、治療を試みるわけですが、過去にレンサ球菌の発症を経験している等の理由で、ペニシリン注射を試す場合には、まずはその時発症している数頭、あるいは同一豚房の子豚のみに限定して接種し、翌日の子豚の様子を確認してから本格治療に入るのが良いと思われます。夏場にレンサ球菌症が多いという話は、現場ではよく聞く話ではありますが、その理由について詳しく書かれている資料を見たことがありません。あくまでも推測なのですが、やはりこれも暑さの影響ではないかと考えています。一般的に離乳豚の快適温度帯は、他の肥育豚や母豚よりも高く、夏の猛暑そのものがストレスになる事は無いのかもしれませんが、真夏は換気量を確保するために離乳舎でもファンを強めに回したりカーテンを全開にしたりします。その時に豚が水や糞尿で濡れていると体感温度が下がってストレスになっているのではないかと疑っています。特に朝方に予想外に気温が下がっていたりした場合には、濡れた子豚は無防備です。これからの季節は、気温差との闘いです。レンサ球菌症の発症がぶり返さないように、濡れた豚のケアと夜間の室温の管理に充分ご配慮ください。
「ピッグジャーナル」(アニマル・メディア社発行)2015年09月号掲載